異常な長時間労働やパワハラ、セクハラ、勤怠記録の改ざん…。言うまでもなく、これらは皆「ブラック企業」の特徴です。
劣悪な労働条件や不当な扱いを受けても「みんな我慢しているし…」と泣き寝入りしている人は多いはず。それどころか、その劣悪さや不当さが常態化しすぎて、おかしなことだと気付かない人もいるかもしれません。
しかし、泣き寝入りにしても、知識がないことにしても、その先にあるのは心身の調子を崩したり、金銭的不利益をこうむったりという悲しい現実です。こんな結果にならないために、労働法に詳しい弁護士の笹山尚人さんは、著書『ブラック企業によろしく 不当な扱いからあなたを守る49の知識』(KADOKAWA 中経出版/刊)で、労働者は知っておくべき法律の知識を伝授しつつ、ブラック企業で実際にあった事例とその対処法を教えてくれます。
■有給休暇を申請したら人事評価が下がった
本書では、社員がほとんど有休をとらない会社で有休を取ったところ、人事評定で最低ランクを付けられたため、抗議したところ「有休取ってるのお前だけだからな。この評価は当然だろ」と言われた事例が紹介されています。
年次有給休暇を取ることは労働者の権利であり、それを取得したことを理由に会社側が労働者を不利益に取り扱うことは許されません。
もし、会社からこんな扱いを受けたとしたら、どんな対処をすればいいのでしょうか?
まずやるべきは、有給休暇を取得したことだけが評価ダウンの理由なのかをきちんと確認することです。後になって、他にも理由があると言ってくる可能性があるため、そのことについて言質を取る必要もあります。
そのうえで、正当な権利を行使したことを理由にするマイナス評定は不当だと抗議して、評定をやり直すように求めるという流れです。
■リストラなのに離職理由が「自己都合」
離職理由が「自己都合」か「会社都合」かで、雇用保険の失業手当が変わるということは多くの人が知るところですが、こんな悪質な例もあるので要注意です。
上司から繰り返し退職勧奨があったため、辞めたくはなかったが仕方なく辞めることにしたAさん。退職勧奨があったのだから当然、離職理由は「会社都合」になるものと思っていましたが、退職後の離職票を見ると、なぜか「自己都合」に。
当然納得いかず、会社に問い合わせたところ、「最終的に辞表を君が書いたのだから、自己都合だろ」という返事が返ってきたそう。
呆れてしまうほどひどいこの会社の言い分ですが、経緯からしてどう見ても「会社都合」ですから、会社を説得するよう努めれば応じてもらえるケースもあります。ただ、応じてもらえない場合もあるため、辞める際には「自己都合」と「会社都合」のどちらを離職票に記載するかを明確に合意しておく必要があります。