年間販売数4憶本以上という国民的アイスキャンディ「ガリガリ君」を生み出した赤城乳業は、2018年に12年連続増収を実現した。
社員数は380名で売上高は454億円。規模は中堅企業。アイス売上で業界6位(2017年)に位置する赤城乳業はどうして躍進し続けることができるのか。
その秘密を解き明かすのが、『ガリガリ君の秘密 赤城乳業・躍進を支える「言える化」』(遠藤功著、日本経済新聞出版社刊)だ。本書は、2013年に刊行された『言える化――「ガリガリ君」の赤城乳業が躍進する秘密』を改題・文庫化したもので、ローランド・ベルガー日本法人会長の著者がその現場力の強さの秘訣を探っていくビジネスノンフィクションとなっている。
何でも言える社風を作り出す「言える化」と2つの工夫
ロッテ、江崎グリコ、森永乳業、明治といった会社と比べると、赤城乳業は規模や総合力ではなかなか太刀打ちできない。そこで赤城乳業が目指すのは小さくても強い「強小」だという。
そこでは、「あそび心」を大切にし、社員一人ひとりが「まじめにあそぶ」ことで、小さくても強い会社を目指している。
著者は「強小カンパニー」を実現するためのキーワードとして「言える化」をあげる。
年齢や肩書に関係なく、社員が自由に何でも「言える」会社になること。それが組織の活性化につながり、一人ひとりの持っている能力を最大限に引き出すことになる。
実際、組織に「言える化」を取り入れても、定着させるのは難しい。どうしても年齢や肩書きを見て言葉を選んでしまうし、言ったことをすぐに否定されてしまうこともある。「言える化」は、相手の意見をリスペクトする気持ちや、経験や知識のある人が若い人の意見に耳を傾ける努力を怠れば、その土壌を育むことはできない。相手の意見に耳を傾ける「聞ける化」があってこそ、「言える化」は成立するのだ。
では、どうすればそういう雰囲気が作れるのか。赤城乳業で「言える化」が機能し、社員たちが躍動しているのは、次の2つの工夫が行われているからだ。
・「言える化」を実践する「場」の設営
・「言える化」を加速する「仕組み」の構築
まずは「場」だが、ここでは11の委員会やプロジェクトが設置されているという。
例えば新商品アイデア研究会は、毎回テーマを設定し、新商品のアイデアやネーミングを社員全員から募集する。さらに対象者は、社員だけでなくその家族や取引先からの応募も受け付けているといい、実際に社員の子どものアイデアが採用されたこともあるそうだ。
また、「仕組み」は、「失敗にめげない評価の仕組み」「部下が上司を評価する仕組み」「『学習する組織』へ脱皮する仕組み」「帰属意識を高める仕組み」といった仕組みがあるといい、これらによって、経営者・管理職と社員同士の心がつながるからこそ「言える化」が機能するといえる。
ガリガリ君誕生秘話や「ガリガリ君リッチコーンポタージュ」をヒットさせた20代の若手社員2人の話など、赤城乳業の躍進を紐解いていくと、会社は人がつくり、人とともに成長していくことがよくわかる。
「ガリガリ君」はなぜ愛され続けているのか。赤城乳業が12年連続で成長を続けている秘密を読むことができる一冊だ。
(新刊JP編集部)
※本記事は、「新刊JP」より提供されたものです。