2016年3月まで『報道ステーション』(テレビ朝日)のメインキャスターを務め、「夜のニュースの顔」としてもなじみ深いフリーアナウンサーの古舘伊知郎さん。
以前はF1レーサーのアイルトン・セナを「音速の貴公子」と呼んだり、レースの途中でリタイヤしたマシンを引き上げる様子を「カジキマグロ状態」とたとえたり、F1やプロレスの実況中継で数々の名フレーズを生み出してきた。
その独特な語り口調は「古舘節」と呼ばれており、5時間でも6時間でも一気にしゃべることができるのが古舘さんだ。
しかし、最近のバラエティ番組の状況は違う。いくらでもしゃべることができるということが「話が長い」というネガティブイメージにつながってしまう。今のバラエティ番組では、短い時間の中で、いかに気の利いたこと、鋭いことを言えるかが勝負になるという。
そこで古舘さんは「一点突破の凝縮ワードで人の心に響く」しゃべりで、視聴者に届けることにしたのだ。
■同じ話を繰り返すときは「その話、再放送?」
『言葉は凝縮するほど、強くなる』(ワニブックス刊)は、「ダラダラしゃべるのはやめだ」と決めた古舘さんが、端的に面白く話せる「凝縮ワード」を使った会話術を紹介した一冊。気の利いたことや面白いこと、そして鋭いことを端的に言う。その技術をしゃべりのプロから学ぶことができる内容になっている。
例えば、話を聞いていると「前も聞いたな」というエピソードが出てくることがある。そこでストレートに「その話、前も聞きました」と言うと相手の気を悪くするかもしれない。
そこで古舘さんが使う返し方は「あれ? その話、再放送?」というもの。ユーモアを交え、ちょっとずらしたフレーズを使うことで気まずさをカバーするのだ。
ただ、ユーモアが伝わりにくいなど、「再放送?」を使えない相手もいる。このときはどうすればいいのか。それは「初めて聞いたふりを貫き通す」という方法だ。そして、話の途中で相手がこの話を前にしたことを気づいたら、「あ。再放送だと思って聞いていました」と言えば、上手くオブラートに包んだ状態で突っ込むことができる。
もっと相手を惹きつけ、楽しんでもらうしゃべりがしたい。鋭いことがどんどんいえるようになりたい。もっと短くまとめる技術がほしい。そんな悩みを抱いている人も多いだろう。
40年間に渡り、言葉を煮詰め続けてきた古舘さんの「凝縮ワード」を参考に、普段の会話の中で実践してみてはどうだろう。
(新刊JP編集部)
※本記事は、「新刊JP」より提供されたものです。