社会人には、スキルアップに執心する人が数多くいる。
「良い職を得るため」「資格を取るため」など、勉強する動機はさまざまであるが、大抵の人は「知識を増やすことでスキルアップができる」と考えるようである。
もちろん間違ってはいない。だが、本当に良い職や大きな仕事を得る人、成功をつかむ人の考え方は少し異なる。彼らは「知識を増やすことでアウトプットが可能になり、その結果スキルアップができる」と考える。
たとえば、英語の勉強をする際に、TOEICの勉強ばかりしている人がいる。単語の勉強、文法の勉強、言い回しの勉強、ヒアリングなどを一生懸命やっている。だが、本当に英語を身につけてスキルアップしたいなら、ネイティブスピーカーとビジネスの話をするほうがTOEICの勉強をするよりも遥かに早く実践的な英語を身につけられることは明らかだ。
(安達裕哉/日本実業出版社)
だから成功者は「ビジネスの話をできそうなネイティブスピーカー」を知り合いなどに紹介してもらったり、英会話スクールなどで友だちになった外国人に「ビジネスをやろう」と持ちかけたりする。
その結果は、大きく異なる。
勉強してTOEICで900点を取ったとして、それはそれで讃えられるべきことではあるが、履歴書の資格欄に「TOEIC900点」と書けるだけである。一方、ネイティブスピーカーとビジネスをやった人は、新しい職を得ようとするときに「外国人と一緒に、◯◯に関するビジネスを立ち上げました。ビジネスのやり取りを英語で問題なくできます」と言える。
どちらに説得力があるかは、明らかだろう。勉強は、勉強すること自体が目的ではなく、何かをアウトプットすることが重要であるのだから、その場を早く持てるほうが良いのは間違いない。
ある学生は「メディアの編集者になりたい」と、メディアの講座などに通っていた。そういった勉強が役に立たないわけではない。インプットをしなければ、やっていることが正しいのかどうかもよくわからない。ただ、究極的にメディアの編集者になりたいのであれば、まずは自分でメディアをつくってみなければ、その勉強は役に立たない。
勉強に終始してもメディアの編集は学べない。アウトプットを重視する人は、とにかくまず自分で編集のできる場をつくってしまう。記事と媒体さえあれば、メディアの形はできてしまう。自分の周りで記事を書いてくれそうな人に声をかけ、自分も記事を書いてみる。そして、インプットした知識を使って編集をしてみる。周りの友人に告知をし、その友人たちの反響を見ながら、生きた知識を手にするのだ。そこで初めて編集というものがどのような仕事であるのかがわかる。