アウトプットが重要、その最たるものが起業である。
「いつか起業したい」と言う学生は、いつの世もそれなりにいる。彼らは起業家と知り合いになったり、あるいは起業イベントに出たりする。中には起業家のための学校に通ったりする人もいる。
もちろん、そういった体験を否定するわけではない。起業はリスクのある行為であるし、知らないことをいきなり始めるのは怖いからだ。
だが、起業は学ぶのとやるのとではまったくの別物である。自分でリスクを取っている時と傍観者でいる時とでは、判断の基準が異なる可能性もあるし、焦りや恐怖との戦いも必要だ。野球の本をいくら読んでもバッティングはうまくならない。素振りを繰り返し、試合で打席にたくさん立つことでバッティングがうまくなるのである。
同様に、起業をしたいなら、まずリスクの小さい範囲で起業してみることが重要だ。例えば、起業家の通る道は概ね以下のようなものだ。
物やソフトをつくり、売ってみる。しかし、まったく売れない。そこで「何が売れない原因なのだろうか」と考え、営業が必要だと思い至る。知り合いに営業し、あるいは紹介を受けて営業してみる。それで少し売れるが、「こんなに売るのがつらいのか。もっとうまく売れないのか。もっとお客さんが多くいる場所に持っていけないか」と考える。
ここで初めてマーケティングの意味が本当に理解できる。教科書で学んだこととは違う、真の意味でのマーケティングの重要性が身にしみるのだ。広告でも、宣伝でも、企画でもない。マーケティングとは何をすべきなのかがわかる。「売れる仕組み」について語る人は多いが、このような経験を経ることで仕組みとはなんなのかが腹落ちする。
勉強する人は、最終的なアウトプットを見据えてやらなければ、時間がもったいない。これは、真剣に取り組む人だけが知っている真実である。
(文=安達裕哉/経営・人事・ITコンサルタント)