高校や大学の入学試験は、基本的に学校の成績やスポーツの成績、入学試験の成績がその学校の基準に達していれば、希望の学校に入れる。しかし、会社に就職するには、学校の成績よりも大学の偏差値と「人柄」が対象となる。そして、入社後も、仕事の出来や人柄で評価されていくことになる。その結果、昇進していく人もいれば、リストラ対象になる人もいる。
とはいえ、人柄といっても、人が人を判断するのだからどこか漠然としたものに思える。会社の人事部は、社員のどのようなところを見て、判断しているのだろうか。
『人事評価の裏ルール』(溝上憲文/著、プレジデント社/刊)では、著者の溝上氏が企業取材で得た幅広い知見の中からリストラの対象となるのはどういう人なのか、その基準となる表の人事評価ではわからない人事評価の裏ルールの存在を紹介している。
内閣府の調査では日本企業全体で450万人以上の余剰人員がいるといわれ、その数は正社員の2割近くにおよぶ。このような仕事に対する意欲を失った余剰人員が、リストラ対象となる。具体的には「チームワークに不向きな協調性のない社員」「ムダな仕事ばかりする非効率社員」「仕事より遊びが大事な私生活重視社員」の3つだ。
例えば、ムダな仕事ばかりする非効率社員。仕事の効率が悪い、時間がかかりすぎると思っている人は、普通であれば、効率よく仕事をするにはどうすればよいのか、自分なりに考えて仕事のやり方を工夫する努力を重ねて改善していくものだ。しかし、いつまでも改善しない人は、そういう意識と努力をしていないと思われても不思議ではない。そして、いつまでもダラダラ仕事を続けていけば、残業コストのかかる不良債権社員とみなされてしまうのだ。
溝上氏は、大企業や中小企業のさまざまなリストラの現場を含めて、1,000社を超える数多くの企業を取材してきた。そうした取材の中で、人事担当者が真っ先に切りたい人とはどんな社員なのか。日ごろの些細な行動や発言で見えてくる。
・自分から進んで何かをやろうとしない。簡単な仕事だからと後回しにする人。
・会社の看板を自分の看板と勘違いしている人
・自分が置かれた状況がまったくわかっていない人
・同じミスを繰り返す
・できないのに仕事を抱え込みすぎる人
・勤務中より、飲み会になると元気が出る人
・何をやっても中途半端。詰めが甘い人
こんな人はどこの職場にもいるのではないだろうか。もしかしたら、自分も…と思い当たる節のある項目もあるかもしれない。人事担当者は、社員の人柄のどんな部分を見ているのか。仕事の実績はもちろんだが、その人柄もチェックされていることは忘れてはいけない。
企業はそれぞれの基準で、人事評価をランク付けしているものだ。リストラが実施される場合は、そのランクの下位からその対象者になる場合が多い。ただし、必ずしも評価の低い社員順にリストラ対象者になるわけではない。その会社の風土や業種ごとに異なる独自の基準である人事評価の裏ルールもあることは知っておいた方がいい。長く会社で働き続けるには、どうすればいいのか。本書は、その処世術となるはずだ。
(新刊JP編集部)
※本記事は、「新刊JP」より提供されたものです。