どんな「ことば」を選び、どうやってその「ことば」を使うか。ことばの使い方によって、相手に与える印象も違ってくるものだ。
ということは、日常で何気なく使っていることばをうまく使えば、コミュニケーションもうまくいくということだ。
『人間関係の99%はことばで変わる!』(堀田秀吾/著、青春出版社/刊)は、ことばに関して言語学や心理学、脳科学の立場から研究している学者が、さまざまな学術上の実験や調査の結果をもとに、いい人間関係をつくるための方法を紹介している。
一人称の使い方で分かる相手との距離の取り方
日本語は、一人称、つまり自分の呼び方が相手との関係によっていろいろ変わるものだ。たとえば、家族と話すときは「僕」なのに、友達と話すと「俺」になり、小さい子どもと話すときは「お兄ちゃん」になったり、仕事では「私」になったりする。
自分のことを「お兄ちゃん」と言うのは、相手である子どもの目から見た自分の呼び方だ。それに対して、「俺」や「僕」や「私」というのは、相手からの目線というよりは、相手との距離に大きく関係していることが多い。逆にいえば、これを使い分けることによって、相手との距離を調節することもできる。
男性が使う「私」は、基本的にヨソ行きのソトのことば。相手との距離があることばだ。一方、「俺」というのは、基本的に仲間ことば。ウチのことばだ。「僕」はウチにいる相手にも、ソトにいる相手でも使えることばだ。
「俺」や「僕」と言うと、ウチ・モードの距離感がつくりだされる。そのため、相手がこちらのなわばりに入ってきて、より親近感のあるコミュニケーシをとれる。それに対して、「私」というソトのことばを使うことは、相手に対して「あなたはワタシにとってソトの人です」と宣言しているようなものなので、相手もウチ・モードのコミュニケーションをとることはしないだろう。これを応用して、「私」から「俺」や「僕」に変えることによって、相手との距離感を縮めることもできる。
たとえば、上司からこんなことを言われる場合、一人称で相手との距離感は変わってくるという。
・その書類、修正し終わったら、「私」のところに持ってきてくれるかな
・その書類、修正し終わったら、「僕」のところに持ってきてくれるかな
後者の方が近くて、親しみやすい印象を持つのではないだろうか。ことばをうまく切り替えて、距離感を調節することで、相手に与える印象に大きな効果をもたらすことになるのだ。
ことばの選び方、使い方だけで、お互い気持のいいコミュニケーションがとれたり、逆に印象を悪くしてしまうこともある。普段、当たり前に使っていることばに、もっと注目し、気遣うことで、より良い人間関係を築けるようになるはずだ。
(新刊JP編集部)
※本記事は、「新刊JP」より提供されたものです。