小手先の高ROEや高収益経営が企業を滅ぼす…短期投資家や金融機関を喜ばせるだけ
競争優位性を磨き差別化するのが利益率向上の最善策
結局のところ、持続的にROEを改善するためには、本業の利益率を高めるために地道に努力をするしかないのです。経営者や社員が雇われているのはそのためです。では、どうすればよいのか。競合他社に対する競争優位性を磨き差別化し続けるしかありません。もっと簡単にいえば、お客様が喜んでプレミアムを支払いたくなるような商品やサービスを生み出し続けることです。アップルや富士重工業などが典型例でしょう。
そもそも高ROE企業のなかで、似たり寄ったりの商品やサービスで勝負している企業はありません。競争優位性の欠如という根本的な問題を解決せずに、多額の手許現金を株主還元としてばら撒いたり、リキャップCBで資本を減らしたりしたところで、ごまかしにすぎないのです。せいぜい短期的な投資家や金融機関を喜ばせるだけでしょう。
ROE改善の本丸は、本業の利益率だと認識し、明日から地道に努力しましょう。そのためには、当期純利益を減らす要因にはなりますが、持続的な投資が不可欠です。株主還元に手許資金を大盤振る舞いしている場合ではありません。
次回は当期純利益というROEの分子であり、非常に投資家に注目される利益指標について批判的に考えていきます。
(文=手島直樹/小樽商科大学ビジネススクール准教授)