高齢者運転による死亡事故が各地で相次いでいます。
特に2019年4月に発生した池袋暴走死傷事故は、何ひとつ落ち度のない母子が死亡し、男女9人(運転手本人は除く)が重軽傷を負うという痛ましいものでした。
この事故に対する社会的インパクトも多く、事故の後、都内では、運転免許証の自主返納をする高齢者が急増しました。高齢者の免許制度を見直す法改正の道筋も示され、高齢者ドライバーの安全運転対策は大きな転換点を迎えています。
■シニアドライバーの運転は本当に大丈夫?
超高齢化社会を迎えた日本では、65歳以上の運転免許保持者の人口が2017年のデータでは1818万人にものぼり、運転免許保持者の5人に1人は高齢者になります。「自分や家族がいつか大変な事故を起こすのではないか」と不安になる人も多いのではないでしょうか。
警察庁が2019年上半期(1~6月)に発生した交通死亡事故を分析したところ、75歳以上の後期高齢者ドライバーによる事故の34%はハンドルやブレーキの操作ミスが原因だったことが分かっています。
この割合は75歳未満の3倍にものぼり、事故率増加の要因として加齢による認知機能や運転技術の衰えが背景として考えられます。
実際に警察庁が2018年に死亡事故を起こした高齢者ドライバーの事故原因を分析したところ、ブレーキやアクセルの踏み間違いなど「操作不適」が30%、左右確認をしないなど「安全不確認」が23%だったことが明らかになっています。
加齢によって注意力や判断力などの認知機能は衰える一方、生活上の事情から免許を手放すことができない人もいるはずです。そういう人は少しでも認知機能の低下を防ぎ、運転能力を維持する取り組みが必要かもしれません。
■高齢者ドライバーは、「運転脳」を鍛えることが大切!
車の運転を安全に行うには、脳のさまざまな力を同時に使う高度な作業が求められます。例えば、道路や交通の状況を察知する「認知力」、察知したことが危険か安全かを見極める「判断力」を同時に素早く働かせ、それと同時にハンドルやアクセルペダル、ブレーキペダルを操作しなければなりません。また、人や車との距離をつかむ「空間認知力」、歩行者や対向車に対する「注意力」、道路標識の意味を思い出す「記憶力」も必要です。
専門家の間では、こうした自動車の運転にかかわる脳の力は「運転脳」と呼ばれています。運転脳が衰えると、事故に至らないまでも以下のような危険なミスが増えるようになります。
「標識や信号の見落としが多くなった」
「行く先や道順を忘れたことがある」
「車間距離を一定に保つことが苦手になった」
「急発進や急ブレーキ、急ハンドルなど、運転が荒くなった(またはいわれるようになった)」
これらはどれも運転脳が衰えているサインですが、『75歳からの免許更新に備える! 運転免許 認知機能検査対策のための運転脳強化60日ドリル』(わかさ出版刊)によると、これらの能力は鍛えることもできるのだそう。
ポイントとなるのが「脳の前頭葉」です。
アメリカの調査では、「脳活性トレーニング」を行うことが運転脳を高める可能性があることがわかっています。米国の自動車保険会社が、1万人を対象にしてある脳トレプログラムの効果について検証したところ、車の運転による自損事故の発生率が48%も低下したことが報告されています。
また、運転脳を刺激するには、4つの認知機能「注意力」「判断力」「空間認識力」「デュアルタスク力(同時に2つのワークをこなす力)」という4つの力を高めることが必要です。そのために脳活性トレーニングを行うことが、認知機能の衰えを防ぎ、運転脳を鍛えることにつながるといいます。
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『75歳からの免許更新に備える! 運転免許 認知機能検査対策のための運転脳強化60日ドリル』では、運転脳を鍛えるために必要な脳活性トレーニングをドリル形式にまとめたもの。認知症専門医や高齢者安全運転支援協会の協力をもとに監修され、ナンプレや暗算、間違い探し、図形、言葉を使ったドリルが12種類、そして運転脳の衰えを調べるチェックシートや、高齢者ドライバーが陥りやすい事故を起こす重大ポイント、運転免許更新時で行われる「認知機能検査」の本番そっくりの模擬試験などが収録されています。
自分の運転や家族の運転に不安を感じている方や、75歳以上の運転免許更新時で行われる「認知機能検査」が控えている方は、今のうちから対策をしておくと、長くハンドル握る助けになるかもしれません。
(新刊JP編集部)
※本記事は、「新刊JP」より提供されたものです。