新型コロナウいルスの世界的大流行を受け、前代未聞の事態に襲われ、先の見えない世の中。
誰もが不安を抱え、行き場のない怒り、悲しみに悶々としている。心が折れそうになる局面に陥ることは少なくない。
そんな時に支えとなるのは、人の思いが紡がれた「ことば」だ。
「失っても失っても生きていくしかないです どんなに打ちのめされようと」
(『鬼滅の刃』2巻第13話「お前が」より)
これは、大人気コミックス『鬼滅の刃』(集英社刊/『週刊少年ジャンプ』で連載中)の主人公・竈門炭治郎の言葉。婚約者が鬼に喰われたことを知りショックを受ける青年にかけた言葉だ。
この言葉は、私たちの心にも、やさしく、だが厳しく呼びかける。理不尽な現実は変えられない。それに絶望せずに次の一歩を踏み出す。それが私たちに課せられた運命だ。
それでも心が折れそうになる時はある。そんな時は、自分を鼓舞することが必要だろう。そんなときに響くのが、炭治郎が自分自身に向けて発したこの言葉だ。
「頑張れ 炭治郎 頑張れ!! 俺は今までよくやってきた!! 俺はできる奴だ!!
そして今日も!! これからも!! 折れていても!! 俺が挫けることは絶対に無い!!」
(同作3巻第24話「元十二鬼月」より)
炭治郎は、このように、おのれを鼓舞する。そして、心の炎を消さない。
『鬼滅の刃』では、炭治郎のほかにも、我妻善逸や嘴平伊之助、富岡義勇や胡蝶しのぶなど鬼殺隊メンバーが、自分を鼓舞するため、あるいは律するための言葉を、よく口にしたり、心の中で念じたりする。
頑張れ、やれる、できる、怯むな、落ち着け、集中しろ、あきらめるな、喰らいつけ、負けるな――といった具合に。
鬼殺隊炎柱・煉獄杏寿郎の言葉も深い。
「そんなことで俺の情熱は無くならない! 心の炎が消えることはない! 俺は決して挫けない」
(同作7巻第55話「無限夢列車」より)
柱になったことを父親に報告するも、喜んでもらえなかったとき、弟の千寿郎に向けて宣言した言葉だ。自分を鼓舞することで、心の炎を絶やさず、どんどん強くなっていく姿がうかがえる。
これは「言霊」だ。
言霊は日本で古くから信じられてきた、言葉に宿るとされる不思議な力のこと。思いを込めて言葉を発すれば、その通りの結果になる、結果を引き寄せる、という考えがその根底にある。
「鬼滅の刃」には、こういった、強い力を宿したセリフが数々ある。まさに、「折れない心をつくる教科書」と言える作品なのだ。
では、どういったセリフに、どういった力が秘められているのか?
漫画とキャリアの専門家である井島由佳さんは、「『鬼滅の刃」には、大人も子どもも、みんなが誰かに教わりたかった、強く生きるための教えが詰まっています」と述べる。
井島さんは、マンガとキャリアの関係を長年研究し、10代の学生から50代の会社員まで、幅広い世代に指導する心理キャリアカウンセラー。その著書『『鬼滅の刃』流 強い自分のつくり方』(アスコム刊)では、ここで紹介した2つのセリフのほかにもたくさんの「鬼滅の刃」のキャラクターたちのセリフに込められた意味を、心理学的に読み解き、私たちが現代社会を生き抜くためのメッセージとして解説する。
ファンタジーだけどファンタジーではない。リアルに通じる教えが詰まっているのが「鬼滅の刃」という作品だ。
「『鬼滅の刃』流 強い自分のつくり方」はそんな教えの数々を解説する一冊。
この本を読めば、「鬼滅の刃」のコミックスやアニメが一層楽しくなることだろう。そして、『鬼滅の刃』を読み返し、あなたの心を支える『鬼滅の刃」の名言を探してみてほしい。
(新刊JP編集部)
※本記事は、「新刊JP」より提供されたものです。