私たちの仕事のクオリティを上げることについて考察してみたいと思います。普段から多くの人が漠然と考えていることですが、ここでは具体的に見ていきましょう。小さなことに思えるかもしれませんが、日々の仕事のスキルアップを例に考えてみます。
完成品の出来栄えだけでなく、作業プロセスも
たとえばメール文章や報告書の書き方について考えてみましょう。この場合、メール文章や報告書の出来栄えだけでなく、内容のまとめ方や、それに要する時間、書くのに要する時間についても考えてみます。完成品のクオリティだけでなく、作業プロセスも検証していくのです。
こうしたスキルについて、自分がどのようなレベルにあるのか、わかりますでしょうか。一緒に働く人たちを思い浮かべると、どんなクオリティのメール文章や報告書を書く人がいるでしょうか。また、それをどのくらいテキパキこなしそうか、人によってレベルに違いがあるのを感じるのではないでしょうか。
上司の立場から見ると、部下がメール文章や報告書をどんなクオリティとスピードで仕上げてくるのかは、自然と把握できているものです。もしあなたが今まで、メール文章や報告書の完成品としての出来栄えしか気にしたことがなかったら、これからは内容のまとめ方や、それに要する時間についても考慮していくとよいでしょう。
使用する時間の長さは、どのくらいか
メールや報告書の類をたまにしか書かないのであれば必要はありませんが、日々、習慣的に作成しているなら、その仕事に使っている時間を割り出してみましょう。
先ほどは、1通のメール、1件の報告書を作成する時間について述べましたが、ここで計算したいのは、一日の仕事の中で、それらの作業に使っている時間です。こうした時間について、これまで考えたことがなければ、一日の労働時間のうち、自分が何をしているのか、一度書き出してみましょう。自分の専門分野の業務に使う時間、会議に使う時間、日々飛び込んでくる仕事に割り当てる時間。こうした分類をして、メール作成や報告書に使う時間も割り出してみます。
一日の分ができたら、一週間や一カ月の分も計算してみます。何にどのくらい時間を使っているかがわかってくるなかで、メールや報告書に使っている時間と、全体におけるその割合もつかめるはずです。
まずは、こうした実態を把握しておくことが大事です。これができるようになると、何に何時間使っているのか意識していない状態は、時間管理に対する意識が低いと感じるようになるものです。要領よく時間を使うことを考える前に、こうした実態を知る習慣を持つことが、自分の仕事を上手く管理するのに必要です。
仕事のクオリティを上げる努力をしてテキパキ仕事をこなすよりも、ただ長時間いることのほうが評価を高めてしまう残念な職場もありますが、そんな環境であればなおさら、何に時間を使っていて、それをどう変えていくべきなのか、自分で意識を高く持っておきたいところです。
現状を把握したら改善計画を
ここまで進めたら、次は、メール文章や報告書の出来栄え、作業プロセスや使用する時間について、どう変えていきたいのかを考えてみます。それらをどのような姿に「改善」したいのかを「計画」していくのです。
現状の把握ができても、改善を施すには時間がかかる場合もあります。そのため「計画的に改善していく」という意識を持つようにします。これができる状態にあれば、その仕事を自分で上手く管理できているといえます。
メール文章や報告書の出来栄えについてであれば、参考図書を入手しに行くといった詳細から計画してみましょう。作業プロセスの改善については、その手のセミナーがあれば参加するといったことも計画の中に織り込めるでしょう。そしてもちろん、学習する時間についても考慮します。
ここでメール文章や報告書について、出来栄えや作業プロセス以外にも、さらに広い視点から考察することはできるでしょうか。たとえば、それらの作業を「1日のスケジュールのなかでいつやっているか」と尋ねると、特に取り決めなくやっている、または、どこかでまとめてやっている、といった答えが出てきます。「必要が生じてから、実際にメール文章を完成するまでに要する時間はどのくらいか」と聞けば、その答えが出てくるでしょう。そうしたなかにも、改善したいと思う点が見つかるかもしれません。
こうしたところまで考えることができたら、メールや報告書のクオリティを上げているだけでなく、仕事のクオリティを上げようとしているといえるものです。
仕事のクオリティは、何をすれば上がっていくものか、はじめから決まっているものではありません。完成品のクオリティと、それができ上がるプロセスについて把握し、それらについて「改善」というマインドを用いて考えることで、やるべきことがわかってくるものです。
やるべきことを把握し、計画的に実行していくことで、自分の仕事のクオリティを上手にマネジメントしていきたいものです。
(文=松崎久純/グローバル人材育成専門家、サイドマン経営代表)