生の魚の卵を食べる習慣がないニューヨークで、明太子を売らなければならない。
どうしたら明太子はニューヨーカーたちに受け入れられるだろうか?
その答えは、「生の魚の卵」という言い方をせず、「ハカタ スパイシーキャビア」というネーミングで売り出すというもの。
これは実はニューヨークのマンハッタンにある博多料理店が実際に打ち出した戦略だ。アメリカ人はフランス料理をリスペクトする傾向にあることを逆手に取って、ネーミングを変えることでアメリカ人に訴求したのだ。
アイデアのヒントはそこかしこに転がっていて、ちょっとした工夫でビジネスのブレイクスルーを生み出すことができる。しかし、その「ちょっとした工夫」に辿り着くのが大変だと感じる人は少なくないだろう。
数々のベストセラーを手掛け、企画した本の累計発行部数は1000万部以上という編集者・柿内尚文氏は、その編集技術や企画の生み出し方を『パン屋ではおにぎりを売れ』(かんき出版刊)という一冊の本にまとめた。
柿内氏の提唱するアイデアの生み出し方、思考法は書籍の編集のみならず、さまざまなクリエティブ分野において有効活用できる。ここでは、本書からいくつかのトピックをピックアップしてご紹介しよう。
■アイデアを「つくりだす」3つのルール
何も良いアイデアが出てこない。頭に浮かんでくるのを待とう。これは、NGだ。なぜなら、アイデアは「浮かんでくるもの」ではなく、「つくるもの」だから。そして、方法論さえ分かれば、自在に生み出すことができるようになる。
柿内氏はここでアイデアを生み出すための3つのルールを挙げる
1.ゴールを決める
2.インプットして現状を整理する
3.考える=「考えを広げる+考えを深める」
この中でイメージがつかみにくいのが、2と3だろう。ルール2は、ゴールに向かうための課題を決め、それに基づいて必要な情報をインプットし、整理をする。整理をするときは、そこから、人間の心にある普遍性や共通する本音を考えていこう。
ルール3では考えを広げる方法と、深める方法の2つを組み合わせて、思考の幅を広げていく。本書では具体的に広げる方法6つと、深める方法6つが解説されているので、ぜひ参考にしてほしい。
■ノートをフル活用すると、自分の「第2の脳」が誕生する!
続いてはノートの活用法だ。本書では考えていることを俯瞰化、見える化し、整理するための「思考ノート」のつくり方が紹介されている。柿内氏おすすめのやり方がこちら。
1.ノートは方眼か無地のものを選ぶ。1テーマを1ページで書く
2.ゴール(目的)をノートの真ん中に書く
3.現状の課題をノートのまわりに思いつくままに書く
4.「考える技術」を使い、課題の整理、課題を「考える」ことを実践していく
5.書き出したことの中で関連性があるものを線で結びつける。そこから気づいたこともどんどん書き込んでいく
6.特に重要だと思うものにマーカーを引く
(p.205より)
1枚の紙にゴール、課題、自分の思考が全て網羅され、線で関連付けがなされている状態だ。思いつきは単なる思いつきのままにせず、目的と結びつける。これで上手く活用することができるようになるのだ。
■君は「シコ練」をしているか?
技術を学んだ。しかしそれだけでは、すぐに活用することは難しい。最後はやはり鍛錬の世界になる。
柿内氏は「考える練習」を「シコ練」と呼び、家の近所のドラッグストアのテーマソングを勝手に作詞作曲したり、大好きな銭湯の価値を高めることを考えたり、レストランのメニューを見て新しいメニューを考えたり、毎日あちこちで訓練をしているという。
そして、その数をこなせばこなすほど、いろいろな場面で役立つと柿内氏。常に「シコ練」を続けることが、アイデアを生み出す人になるための秘訣なのだ。
「あの人が考えたことはいつもヒットしている」「いつもすごく良いアイデア生み出せる」と言われる人の思考技術が、本書では解説されている。「もう何も考えつかない」と悩んでいる人から、「もっと良いアイデアを生み出したい」と思っている人まで、幅広く役に立つ一冊だ。
(金井元貴/新刊JP編集部)
※本記事は、「新刊JP」より提供されたものです。