近年、「東大生の48.6%が、『勉強はリビングでしていた』」(※注1)という調査結果が発表された。その影響か、子を持つ親のあいだで、わが子をリビング学習させようという風潮が高まっている。
だが、リビング学習をさせれば、子どもの学力が必ずアップするというほど単純な話ではない。わが子をリビング学習させることの本当の効果は、「子どもが嫌がるフレーズ」を親が口にしなくなることにこそあるのだ。
■子どもの「学ぶ意欲」に火をつけるのは、親子の会話
子どもが親から言われて嫌がるフレーズの代表格、「勉強しなさい」。
『大切なことは、みな子供たちから学んだ』(七田厚著、日販アイ・ピー・エス刊)によると、子どもにリビング学習をさせることで、結果として、親は「勉強しなさい」というフレーズを口にしなくなるという。なぜか?
ここでは本書の著者で、教育研究家でもある七田厚さん自身のエピソードを紹介しよう。
ある日、七田さんは自宅のリビングで仕事をしていた。
すると帰宅した小学二年生の娘がそばに駆け寄ってきて、「作文の宿題が出たのだけど、何を書いていいのかわからない」と愚痴をこぼした。
しばらく何も言わずに自分の仕事をつづけていた七田さんだったが、いっこうに宿題にとりかかろうとしない娘さんに「何について書く宿題なの?」と質問してみた。
娘さんは「今日、学校でやった『お買い物ごっこ』のことを書くんだって」と答えたため、七田さんはさらに「ふーん、それってどんなものを売っているの?」「何屋さんがあるの?」「おもちゃのお金を使うの?」と質問を重ねていった。
結果、何が起きたか。上記のようなやりとりをするうちに娘さんの筆は進みはじめ、気づけばノート10ページ分にもわたる作文を書き終えていた。
一連の出来事を振りかえり、七田さんはこう語る。
「私は娘に『作文の宿題をやりなさい』とは言いませんでした、何気なく質問を投げかけただけ、娘はそれを捉え、自分の『勉強』にフィードバックする。子供に対する親の関わり方はこれくらいがいい」(P144~145より引用)
親と子の物理的な距離が近づけば、会話が生まれやすくなる。会話が進むうちに、親が子の勉強を見る恰好になり、子どもは自発的に学習に向かうようになる。そして、目の前で子どもが嬉々として勉強している姿を見れば、親は「勉強しなさい」と言わなくなるというわけだ。
七田さんの父であり「七田式教育」の生みの親・七田眞さんも、決して「勉強しなさい」と言わず、すすんでわが子の勉強を見る人だったそう。
本書では他にも、七田さんが中学1年生のとき、夏休みの自由研究をどうしようか悩んでいたところ、「食べられる野草を研究してみたら?」と持ちかける等、七田眞さんのユニークな教育方針が垣間見える具体的なエピソードが多数、紹介されている。子育てのヒントにあふれた一冊といえよう。
(新刊JP編集部)
※注1テレビ東京『ザ・逆流リサーチャーズ』番組調査
※本記事は、「新刊JP」より提供されたものです。