近年、日本史をテーマとした本が、たびたびベストセラーになっている。
『もういちど読む山川日本史』(山川出版社)、『読むだけですっきりわかる日本史』(宝島社)、『いっきに学び直す日本史』シリーズ(東洋経済新報社)などがそうで、大人になってから歴史を改めて学びたいという人は多いようだ。
5月19日に発売された『CD2枚で古代から現代まで 聞くだけで一気にわかる日本史』(アスコム刊)は、こうした「歴史の学び直し」を、社会人にとってやりやすいようにアレンジした一冊。
本に加えて付属の音声CDを聞くことで、古代から現代まで、日本史の通史を2時間で学ぶことができるため、通勤中や家事をしている時など、細切れの時間を活用できるためだ。
■歴史は「物語」で理解する
長い日本の歴史をわずか2時間で語ることができたのは、著者である馬屋原吉博氏の存在が大きい。馬屋原氏は中学受験の専門教室「SS-1」のカリスマ講師。これまで、開成、灘、筑駒といった有名中学に多数の教え子を合格させてきた実績を持つ。
馬屋原氏はもともと、日本史の予備知識を持たない小学生に対して、150分で日本史の基礎知識を詰め込む授業を実施。物語を聞いているように分かりやすく面白い語り口は、今回のCDブックでも存分に発揮されている。
馬屋原氏によると日本史を学ぶコツは「各時代をイメージを先に覚えさせて、頭の中に知識をしまう『引き出し』を作る」こと。例えば、飛鳥時代は「国を一つにまとめようとした時代」というイメージを先に教えておく。そうすることで、同時代に聖徳太子が実施した冠位十二階は「当時大きな力を持っていた豪族の権力を弱めるためのもの」、律令制は「権力を国家に集中させるためのもの」と、どれも「国を一つにまとめる」ための取り組みだったことがわかり、すんなりと頭に入るのだ。
従来のような暗記型の日本史学習とは違い、「なぜ」まで語られている点も、学習者の納得度を高める取り組みだ。
一例を挙げると、794年の平安京遷都。「鳴くよウグイス平安京」という語呂合わせで覚えている方も多く、この歴史上の事実は有名だ。しかし「なぜ」遷都する必要があったのかまで分かっている人は少ない。
馬屋原氏によると、奈良にあった寺院の平安京への移転を禁じることで、仏教勢力の政治介入を防ぐ狙いがあったそう。無味乾燥な暗記ではなく、こうした「なぜ」が「へぇ」に変わることで、歴史の理解は深まっていく。
■狙いは「日本史に親しむ入り口」
ただし、2時間という長さのため、細かなディテールについては言及されていない点もある。例えば、上杉謙信と武田信玄の川中島の戦いや、幕末の新選組が起こした池田屋事件などにまで触れられているわけではない。
今回の本は、まずは多くの人が歴史により興味を持つ入り口となることを意図して制作されているため、前述したように、時代ごとのイメージを持ち、「なぜ」歴史がそのように動いたのかを説明し、歴史全体の流れを整えることに重点が置かれている。専門用語なども極力、排除して、誰にとっても分かりやすい本となっている。まず日本史に関する基礎的な知識がしっかり身につけば、歴史を題材にした小説やドラマ、映画などをより楽しめるようになる。日本史ファンの間口を広げることが狙いだ。
馬屋原氏の講義の一部は、現在youtubeで視聴可能。その鮮やかな語り口は、歴史を学ぶ意欲をいっそう高めてくれるはずだ。
(新刊JP編集部)
・馬屋原吉博氏講義動画(https://youtu.be/71pyx9-9Vmg)
※本記事は、「新刊JP」より提供されたものです。