仕事でも私生活でも、目標を立てたものの、なかなか達成できずに中途半端なまま足踏みしているという人は多い。
能力的には申し分なし、スキルも知識もある。才能もある。ただ、あるものが欠けているだけで目標達成は急激に難しくなる。逆にそれがもしあるのなら、優れた才能やセンスがなくても、目標を達成することができる可能性がグッと高まるだろう。
それは、「やり抜く」ということだ。
■目標を達成するための9つの習慣
続けられることも才能のうち、と言われるが実はそうではない。
心理学の見地から「やり抜く」ためには共通した行動や思考パターンが存在することが明らかになっている。
「才能が成功に導いた」のではなく、「ある種の思考や行動によって、自らを成功に導いている」
そう冒頭で述べているのが、ハイディ・フラント・ハルバーソン氏による『やり抜く人の9つの習慣』(林田レジリ浩文著、ディスカヴァー・トゥエンティワン刊)である。
著者のハルバーソン氏は米コロンビア大学の社会心理学者で、モチベーション理論の第一人者だ。そんなモチベーションのプロが目標をできるかぎり達成に近づけるための習慣を9つに分類し、説明している。
では、その「9つの習慣」を並べよう。
1.目標に具体性を与える
2.目標達成への行動計画をつくる
3.目標までの距離を意識する
4.現実的楽観主義者になる
5.「成長すること」に集中する
6.「やり抜く力」を持つ
7.筋肉を鍛えるように意志力を鍛える
8.自分を追い込まない
9.「やめるべきこと」より「やるべきこと」に集中する
意外と「当たり前」の項目ばかりが並んでいて、拍子抜けした読者も多いのではないか。しかし、この「当たり前」が難しいから、目標達成ができないのだ。
■「if-then」プランニングで目標達成のための習慣づけをする
それぞれの習慣の中にはさらに細分化されて、やるべきことや考え方が説明されているが、その中で核の一つとなる目標達成のための思考法がある。
それが、「if-then プランニング」である。日本語にすると「もしこうなったら、こうする」という意味だ。
そもそも目標を達成するには実行と習慣づけが必要だが、この思考法はそれをいっぺんに解決してくれる。具体的には、事前に「いつ」「何を」やるかをはっきり決めておくことで、実行できる確率は2倍から3倍も高くなるという。
例えばこんな感じで応用できる。
(if)もし、午後6時になったら
(then)必ず退社する
(if)もし、月曜日、水曜日、金曜日になったら、
(then)朝6時に起きて仕事の前にランニングをする
(if)もし、同僚とのおしゃべりで仕事がはかどらなかったら
(then)おしゃべりタイムを5分と決めて、5分後になった仕事に集中する
心理学の見地によれば、脳は「XならY」という文章を記憶しやすく、無意識のうちにその式に従って行動することができるようになると著者は述べる。つまり、自分自身を実行に向かわせやすく、そして行動を習慣化させやすいのだ。
本書『やり抜く人の9つの習慣』はわずか120ページのとても短い本であり、書かれている内容は無駄がなく、極めてシンプルだ。サイズも単行本よりも一回り小さいサイズなので、デスクの上に置いておいても映える。
「やり抜く」ためには、ただガムシャラに続けるのではなく、習慣づけ、思考法を駆使して、目標を達成するために行動計画を遂行していくことが求められる。成功するために最も重要なピースを授けてくれる一冊である。(新刊JP編集部/金井元貴)
※本記事は、「新刊JP」より提供されたものです。