絶対に受注しないといけない案件や、絶対に通したい企画。仕事には時に、失敗が許されない「大勝負」がある。こんな時、ほとんどの人は、企画内容をギリギリまでブラッシュアップしたり、相手方への提案を練り込んだりするはず。
しかし、端的に言ってこれはまちがいだ。
「大勝負」に勝ち続ける人は、自分の望む結果を得るためにそういう時間の使い方はしない。というのも、本当に仕事ができる人というのは、仕事の成否を分けるポイントは、自分の提案や作品の質とは別のところにあるとわかっているからである。
では、仕事の結果を分けるものは何か。誤解を恐れずに言えば「根回し」ということになる。企画や提案のクオリティは大事だが、自分の思惑通りに事を運びたいなら、最後のブラッシュアップの時間は「ラフ段階で」関係者への根回しに使う方が、いい結果が出やすいのだ。
■「クオリティ」より「根回し」が仕事の結果を決める
これは、相手の立場で考えるとわかりやすい。
『どんな人とも!仕事をスムーズに動かす5つのコツ』(濱田秀彦著、すばる舎刊)は、プレゼンや営業を受ける側の心理を、「いきなり飛んできたボールは誰でも本能的によけようとします」としている。
これは、どんなにいい内容であれ、事前の予告なしに投げられた提案に対して、人は本能的に拒絶しやすいということ。ここで「根回し」の必要性が出てくるのだが、考えてみれば根回しの方法というのは、誰も教えてくれないものかもしれない。
たとえば、自分の提案を通したい時、有効なのは関係者に対して、事前に提案の内容を伝えて賛同を得ておくことだが、その際に注意すべきは、提案内容と同時にその提案に対する自分の意欲と前向きな姿勢を見せること。
事前段階では、ポジティブで熱意のある人の提案に真っ向から異を唱える人は少ない。そして、ここで同意を得られれば、本番でそれをくつがえすような意見は言いにくくなるものなのだ。
■協力を頼みたい人には、まず相談にいく
事前に予告をしておいた方が相手から受けられやすいのは、何かを依頼したり、言いにくいことを言ったり、誰かを誰かと引き合わせたりする時も同様だ。どのケースも根回しがあった方がことはスムーズに運ぶのはいうまでもない。そろそろ、「仕事上手=根回し上手」ということがわかってきたのではないか。
人に協力を依頼する時がわかりやすい。自分の負担が増すかもしれない依頼をいきなりぶつけられて、すぐにOKを出す人は多くはないだろう。ならば、「依頼」だということを最初は告げず、「相談」の形でアドバイスを請う方がいい。
「こう考えているのですが、どうでしょうか」と、相手が答えやすい形で問いを投げかけて、相手が乗ってくればしめたものだ。 「これからも相談に乗っていただけますか」と聞かれてNOという人間はいない。
このパターンで何度か相談され、アドバイスを与え、そのアドバイスによっていい結果が出たことを聞かされた後、正式に協力を依頼されたら、心情的に断りにくいものがあるのは想像に難くないだろう。
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『どんな人とも!仕事をスムーズに動かす5つのコツ』では、ビジネスで自分の望む結果を得るために、相手にどう働きかけるかという対人術が解説されている。
恐るべきは「どんなタイミングで、どんな立場の人に、どんなことを言えばいいか」まで綴られている具体性だ。それは、人間が生まれながらにもつ性質を利用して断れないようにする秘訣と言ってもいいかもしれない。
本書を読めば、成果物を磨き上げるよりも、熱心にプレゼンをするよりも、まっさきにやるべきは関係者への事前のはたらきかけだということがわかるのではないか。
(新刊JP編集部)
※本記事は、「新刊JP」より提供されたものです。