日本で起こった「バブル」といえば、何を思い浮かべるだろうか?
1990年代初めに崩壊した「不動産バブル」、2000年の「ITバブル」、06年から07年にかけて起きた「ヒルズ・バブル」などが挙げられる。
バブルの歴史は、17世紀オランダの「チューリップ・バブル」に始まり、姿を変えながら世界各地で起こってきた。そして、今、日本には新たなバブルの兆しが見え始めている。
そんな「今起きつつあるバブル」を追った一冊が『今そこにあるバブル』(滝田洋一著、日本経済新聞出版社刊)だ。
著者も冒頭で断っているが、本書は「投資の指南書」ではない。あくまで今の日本の市場と経済を追ったルポだ。
しかし、現状を把握することで資産運用にも大いに役立つ部分があるだろう。
■「バブル再来」のお膳立ては、整いつつある?
著者は、今の日本の市場や経済動向を俯瞰し、「バブルめいた」状況にあると見る。局所的ながら活気を取り戻してきた街や消費行動。着実に増加するインバウンド消費を背景とした一部商業地の地価上昇。緩やかながらも上昇傾向を見せる賃金など、景気回復の兆しが散見され始めている。
こうした社会情勢にはバブルの再来を思わせるものがあるが、ひとつの指針として興味深いのが、本書で取り上げている2013年に日本経済新聞で掲載された「バブル再来の条件」という記事だ。
これには7つの項目があり、記事ではその当否を判断している。
1.金融緩和で世の中にお金が余っている:○
2.市場で値上がり狙いの短期売買が増える:○
3.社会の変革期で将来の予想が難しくなる:○
4.市場でバブル崩壊を経験した人が減る:△
5.新しい金融の仕組みが生まれる:△
6.「土地需要が増える」とみんなが信じる:×
7.銀行が貸し出しを増やし、お金が増える:×
著者は当時の当否を「13年初めの判断としては妥当なもの」としながら、現在では、「×」だった2つの項目も「○」に傾いていると述べる。
つまり、バブル再来の環境は、整いつつあると言えるのかもしれない。
■「AI」の登場で活気づく投資信託
今、カネが殺到している市場はどこなのか?
まず挙げられるのは、「アパートローン」「タワーマンション」への投資だ。節税目的の資金が流れ込みバブル化しており、不動産経済研究所によれば「2017年はタワマンラッシュになる可能性が高い」という。
だが、タワーマンションのような高額不動産への投資や投機は、収入や資産が限られる人々にとっては高嶺の花でしかない。
個人投資家の気になるところは、やはり話題の「AI」関連銘柄だろう。