企業における上司の価値は、「自分のチームのパフォーマンスを最大化すること」と「人を育てること」に尽きるといっていい。
ただ、もしかするとこの二つは結局同じことを言っているのかもしれない。部下が育たずにチームのパフォーマンスが上がることは考えにくいからだ。
では、「人を育てる」ために、上司がすべきことは何なのか。
■激動する「上司の能力」
『部下のやる気を引き出すワンフレーズの言葉がけ』(日本実業出版社刊)の著者、占部正尚氏は、今上司を取り巻く環境が大きく変わってきていると指摘する。
30年前、企業の主役は上司であり、上司の采配についていくことで経験を積み、部下が成長していくというモデルだった。つまり、「強力なリーダーシップ」こそ上司には求められていたわけだ。
ところが、価値観も働き方も多様化し、誰もが勤めている会社で出世を目指すわけではなくなった。「給料はそこそこでいいが、プライベートを充実させたいから仕事量が増えるのは困る」という社員や「起業したいから三年で辞める」という社員、そしてその会社で出世したい社員、やる気が出る「ツボ」はそれぞれ全く異なる。
それぞれが主体的に、意欲的に仕事に取り組めるような環境を作ったり、背中を押してやることが、今の上司に必要とされる力。その意味で、今の企業の主役は部下なのだ。
■安っぽいほめ言葉は部下に見破られている!
こんな状況で、部下とどう接していいかわからないという上司は多い。その最たる例が「ほめ方」。「ほめて育てる」が主流の今だが、人をほめるのは、簡単そうで難しい。
たとえば、良かれと思ってほめても相手からの反応が薄いと、上司としては「ほめ方が足りないのかも」と考えがちだ。しかし、実際は逆で、安易なほめ言葉に白けているか、ほめられることに恥ずかしさを感じていることが多い。
「ほめなければ」という思いからほめているか、それとも本当にほめているかは、部下からすればお見通し。心からほめないのなら何も言わない方がマシだ。
それでも、部下に対してポジティブな言葉をかけたいなら、様々な場面で「ありがとう」と感謝の気持ちを伝えること。下手にほめるよりも感謝される方が気持ちが高揚するというのは、経験上わかる人も多いだろう。
■「コイツのどこをほめればいいんだ…」への対処法
また、あまりに仕事ができない部下の場合、ほめようにも「こいつのどこをほめればいいんだ…」となってしまうこともある。
本書によると、これはほめることが「目的」になってしまっているから起きること。しかし、ほめることは能力を発揮してもらうための「手段」でしかない。
だとしたら、上司のすることは一つ。今はだめでも、上司から見て伸びしろがある点を見つけて、そこをほめることだ。こうすることで、部下は自分の強みや強みになりうる点に気づくことになる。「これから伸びる自分」をイメージできるようになるのだ。
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多くの上司を悩ませる、部下への接し方や言葉のかけ方について、本書ではここで紹介したほめ方以外にも、詳しく解説されている。
「イマイチ部下に信頼されていない気がする」
「部下のモチベーションが上がらない」
こんなケースに心当たりがあるなら、素早い対処が必要だ。
(新刊JP編集部)
※本記事は、「新刊JP」より提供されたものです。