会社で最も重要なリソースは何か。それは、設備でもお金でもなく「人」だろう。
比較的規模の小さな会社ともなれば、ギリギリの人手で現場を回していて、一人でも辞められたら厳しいという環境も珍しくはない。
特に人離れが激しい業界といえば介護職だ。公益財団法人「介護労働安定センター」の調査によれば、2015年10月からの1年間で介護職員の退職者は全国で16.7%。この数字は他の業界と比べても高い水準だ。
そんな介護業界において、驚くべき社員定着率を誇る会社がある。埼玉県さいたま市で介護事業を行うリハプライム株式会社だ。同社の社員定着率は年々良化しており、2017年の社員定着率は96%になっている。
どうすれば社員が辞めない会社をつくることができるのか。
その方法を明かしているのが、同社代表取締役の小池修氏が上梓した『日本一社員が辞めない会社』(小池修著、ぱる出版刊)だ。
本書は、退職者が後を絶たないことに頭を悩ませる社長やリーダー、アルバイトやパートが定着しない店舗経営者にとって学ぶべきことが多い一冊となっている。
■社員の「待遇改善」を後回しにしてはいけない
著者は、社員が辞めないための大前提として、まずは社員の待遇改善が必須であると述べる。
「有給休暇が取れない」「給料が安すぎる」といった待遇の悪さは社員にとって大きなネックだが、多くの経営者は「社員の待遇改善は会社が儲かってから」と考えてしまう。
しかし、会社が儲かるためには、社員がいなければ話にならない。だからこそ、社員の待遇改善は真っ先にすべきことなのである。
ギリギリの人員や売上の中、休暇を取らせてあげることや昇給の要望に応えていくことは、現実にはなかなか難しい問題かもしれない。しかし、給料の面でいえば、仕事の成果の一部をインセンティブ制にするなどして昇給に応えていくことも可能だと著者は言う。
ただし、待遇改善はあくまで前提条件。これだけで社員の離職を防ぐのに十分とは言えない。
社員が辞めないために絶対に必要なのは、「経営理念」を明確にし、社員と共有することだ。
本書では「理念」を軸にした社員が辞めない会社づくりの「4つのステップ」が紹介されている。どのようなものか見ていこう。
■「経営理念」は社長室の額縁に飾るものではない
著者は経営理念を「“どんな会社を創りたいのか?”を言葉にしたもの」だと定義している。社員が社長やリーダーの顔色を見るのではなく、その「理念」、その「想い」から自己判断することが許されれば、おいそれと会社を辞めてしまうことはないはずだ。
問題は、いかにその「理念」を社員に伝え、共有し、行動に変えていくかということだ。そのためのステップが次の4つだ。
1.会社の「理念」を確立する(会社の「目的」の共有)
2.リーダーが理念を「体現」する
3.社員の味方となり「信頼」関係を構築する
4.社員の「(やる気)支援」をする