まずは「理念」の確立だ。どんな会社にも「経営理念」はあるだろう。しかし、それは「社長室の額縁に収まったお飾り」になっていたり、「朝礼で復唱するだけの形骸化したもの」になっていたりはしないだろうか?
経営理念とは、この会社が「存在する目的」であり、「譲れないフィロソフィー」であるから、社員に伝わっていなければ、社員自身が「働く目的」を持てない状態に陥ってしまう。それはモチベーションの低下につながるし、社員はリーダーの顔色伺い、指示待ちにならざるを得ず、反発を招く危険もある。
したがって、経営理念は言語化されて、社員に伝わることが何より重要だ。
著者が社長を務めるリハプライム株式会社の経営理念は「敬護」というものだ。これは著者による造語で「人生の大先輩である高齢者の方々を、介助して護るのではなく、敬って護る」という意味が込められている。
こうしたわかりやすく言語化された経営理念があれば、社員の働く目的もブレず、モチベーションは維持されていくというわけだ。
■理念の「体現」はリーダーが率先して行うもの
経営理念がお飾りになってしまっている会社では、リーダー自らが理念に反したことをしていることが多いです。そうなると社員はリーダーに不信感を抱き、職場を去ってしまう。
したがって、経営理念の浸透には、リーダー自らが率先して「体現」することが不可欠だ。
たとえば、著者は、開業してすぐ、ある歩行困難なシニアの歩行をサポートする際、「おいっちにぃ、おいっちにぃ」という掛け声を無意識に出してしまったという。しかし、それは高齢者を敬う気持ちに欠けており、「敬護」の精神に反する言葉だと気付き、以後、改めたそうだ。
こうした社長やリーダーによる意識的な理念の「体現」によって社員に「理念」を浸透させていく。また、このように言行一致で理念を「体現」していくことや、様々な手法で「信頼」関係を普段から創っていくことで社長やリーダーの言葉と指示が伝わりやすくなる。
また、社員のやる気「支援」も、社員が辞めない会社づくりにおいて大切なポイントだ。
著者の会社では、社員と社長の個別面談が定期的に行われており、そこで社員の要望や夢を聞き、今の会社でどのようにそれらを実現していくかを、膝を詰めて話し合うという。
「理念」を持って社員と接することを「綺麗事」「面倒だ」と思うリーダーや経営者もいるかもしれない。だが、社員が定着しない、辞める人が後を絶たないという会社は、まさにそんなリーダーの思いが「退職」というカタチに表れていると言えるだろう。本書を読めば、リーダーや経営者が忘れがちな「理念」の本当の意味と、その効力を再確認できるだろう。
(新刊JP編集部/大村佑介)
※本記事は、「新刊JP」より提供されたものです。