近年、街に増えているからあげ専門店。
からあげ市場の売り上げに目を向けると、2019年の853億円から、コロナ渦にもかかわらず、2020年には1053億円に増えている。外食産業が大ダメージを受ける中でも、からあげの売り上げは上がっているのだ。(参考記事:唐揚げ市場が1000億円超えの急拡大 専門店とスーパー、強味と弱味は?)
からあげ市場の活性化に伴い、専門店の数も増えるなか、「からあげの聖地」と呼ばれる大分県中津市で、「からあげ専門店 げんきや」を営むのが『史上最大のからあげ革命 – 日本の食文化を大きく変えた大分県の小さな専門店の挑戦 -』(ワニブックス刊)の著者でもある井口泰宏氏だ。
■からあげの名店・げんきやが起こした「ムネ肉」の革命
げんきやは、2018年「第9回からあげグランプリ(R)」の「西日本しょうゆダレ」部門で栄誉ある最高金賞を受賞したからあげ専門店の名店。げんきやの最大の特徴は、パサパサしがちなムネ肉にこだわって勝負をしていること。生物学の研究者である義弟にアイデアを出してもらい、井口氏はムネ肉を柔らかくする研究に没頭。柔らかくして美味しいムネ肉から揚げを作る独自の理論に辿り着く。それに合わせ、秘伝のタレを完成させ、からあげの本場でも軽んじられていた部位である「ムネ肉」で革命を起こし、げんきやを人気店まで成長させた。
とはいえ、「味」だけではなかなかうまくいかないのが飲食店の難しいところ。味は申し分なしのげんきやだが、井口氏の経営哲学とは、どのようなものなのか。
げんきやの経営哲学の根底には、井口氏が学生時代に励んでいたラクビーがある。社会にはいろいろなタイプの人がいて、会社組織は多くの人が同じ目標に向かって動かなければいけない。ラクビーは1チーム15人という大人数で戦うスポーツ。タイプも性格も考え方も違う15人がまとまらなければ勝てない。仕事における人間関係もラクビーから学んだところが多いという。
その一つが「信用して人に任せる」こと。つまり「仲間を信じる」ことだ。
井口氏のラクビーでのポジションはスクラムハーフ。スクラムハーフは、自らボールを持って点を取る役目ではなく、フォワードにボールを託したり、トライを狙うバックスにボールを供給して展開を任せるのが仕事のポジション。経営者となった今、人に仕事を任せることに抵抗がないのはが向いていると、このポジションで長年スポーツをしていたことが大きいのではないかと、井口氏は自覚している。
「仲間を信じる」ことができるからこそ、げんきやが大きく成長できて、順調に経営ができている。
げんきやのオーナーであり、からあげプロデューサーとしても活動。2021年3月現在、からあげ専門店プロデュース店舗数日本一を誇り、からあげ文化を広める役目も担っている。「世界中の人を喜ばせたい」「おいしいからあげで笑顔にしたい」という思いが井口氏の原動力になっている。からあげへの熱い情熱を読むことができる1冊だ。(T・N/新刊JP編集部)
※本記事は、「新刊JP」より提供されたものです。