「同じミスを繰り返すのは集中力がないからだ」と他人から言われたり、自分を責めたりしたことはないだろうか。
集中力は高い方が良い、というのは誰もが疑わないことだろう。しかし、集中力が高くないからこそできる仕事法がある。むしろ、集中力の高さが邪魔になることもあるのだ。
「アンチ集中力」を掲げる小説家・森博嗣氏は著書『集中力はいらない』(SBクリエイティブ刊)で、常識にとらわれない頭の使い方を提唱している。
■「集中力」が邪魔になる仕事とは?
では、「アンチ集中力」とは一体どういうことだろう。 厳密に言えば、「集中力」を全否定するものではない。それどころか、「集中力は大事だ」と思っているという。
では、どういう点が「アンチ」なのか。 森氏が投げかけるのは、「全面的にそれを押し通すのはいかがか」ということだ。集中力はみんなが持っている印象ほど、素晴らしいものではないと気付いてほしいということ。
作家という職業の要は「発想」にあると森氏。発想さえあれば、あとは文字を書くという労働があるだけだ。発想が求められる仕事では、発想すること、インスピレーションが成果のほとんどになる。
ここで大事なことは、「発想」にはいわゆる一つのことしか考えない「集中」が逆効果であるという点である。別のことを考えていたり、あれこれ目移りしているときのほうが、発想しやすい。それを森氏は経験的に知っているという。 発想のヒントはちょっと離れたところにある。それに気付くには、一点を集中しているだけでは難しいのだ。
■マルチタスクのメリットとは?
また、集中するばかりではなく、分散した思考や行動が有効な場合もあるだろう。複数のことを同時に進める、つまりマルチタスクだ。 これらには、どのようなメリットがあるのか。
まず、時間を有効に使えるようになる。人間の作業のほとんどは、多かれ少なかれ待ち時間が発生する。こうした無駄な時間をただ過ごすのではなく、別の作業を進行させれば効率が上がるというわけだ。また、分散型の仕事法は、不測の事態に対して比較的容易に対処ができると森氏は語る。集中しないことで、常に冷静に作業を進めることができ、万が一の場合にはタイム・シェアしている複数の作業の間で、時間のやりくりができるようになる。
集中力がどうしても足りない、続かない。そんな方は森博嗣氏のアンチ集中力の思考法を試してみてはどうだろう。
(新刊JP編集部)
※本記事は、「新刊JP」より提供されたものです。