「○○に出してやるよというのをエサにナンパさせたり、飯をおごらせたりしてきたスタジャン(←こいつ本当のカス)のスタッフ、売れて、この世界から消してやる」(『天才はあきらめた』p.202より)
などなど、数々の復讐というガソリンをノートにつづり、「劣等感は最高のガソリン!」と語るのは、漫才コンビ・南海キャンディーズの山里亮太さんだ。
■「山里亮太はヤンキーであり、武闘派の遠隔操作兵である」
TBSラジオで放送中の「JUNK 山里亮太の不毛な議論|で、リスナーから「ボス」と呼ばれていた山里さんは「山里先生」とも呼ばれるようになった。なぜなら『天才はあきらめた』(山里亮太著、朝日新聞出版刊)を出版したからだ。
このエッセイは、2006年に発売された『天才になりたい』を本人が全ページにわたり大改稿。さらに新しいエピソードを加筆して文庫化したものである。
嫌いな奴にされた仕打ちに対して抱いた卑しい感情を味方にし、その感情を燃料に変換することで、努力というつらい行動が簡単にできるようになる。
山里さんにとって「劣等感は最高のガソリン」なのである。
山里さんは自分にこう言い聞かせているという。
――自分を「頑張れなくさせるもの」を振り切って、全力で走れ!
そんなものからは、逃げて逃げて逃げまくれ!
そのためのガソリンとして、自分が味わった苦しい感情を全部使え!
嫌いな奴を燃料にして、脳内で燃料にし、脳内で圧倒的な勝利を掴め!(p.4より引用)
こうして、山里さんはお笑い芸人として走り続けている。
そして、本書の解説はオードリーの若林正恭さんが担当。約20ページに及ぶ解説は、圧巻の面白さだ。解説は読まない派という人もいるかもしれないが、本書は解説までしっかり読むのがオススメだ。
友人でもある若林さんは、山里さんのことをどう見ているのか。「山里亮太はヤンキーである」というのだ。
解説を要約すると、学生時代ヤンチャだったということではなく、内面がヤンキーなので、実際のボディコンタクトは苦手。山里さんの戦い方は、深夜ラジオやライブで吊るし上げるという遠隔操作型の戦争で、「武闘派の遠隔操作兵」と若林さんは称している。そして、「山里亮太は天才である」ともつづっている。
劣等感をガソリンにし、絶え間ない努力を続けている山里さんのワードセンスとその数、そして頭の回転の良さから繰り出されるツッコミは天才的だ。
「不毛な議論」はもちろん、スタジオ出演中の『テラスハウス』では喋りたりなかったことを喋るYOU TUBEで配信中の『山チャンネル』での独り喋りはその本領を発揮している。「努力の人」でもあり、「天才」でもあるのだ。
発売からわずか2カ月で10万部を超えたという本書。元相方や現・相方のしずちゃんにひどいことをしていた、という過去の一面もありながら、山里さんの感情むき出しの文章を楽しんでみてはどうだろう。
(新刊JP編集部/T・N)
※本記事は、「新刊JP」より提供されたものです。