ブラック企業を疑う最大の理由は「社員が疲弊」
――就活生は「ブラック企業かどうか」について、よく調べているようですね。約8割が調べた経験を持っており、調べ方でもっとも多かったのは「クチコミサイト」で約9割に上ります。
武井 クチコミサイトや就職情報サイトの内容を確認するだけではなく、OB訪問やインターンシップなどで新人や若手の社員に話を聞き、裏を取っています。
「就職活動で『ブラック企業』を疑った企業の態度や様子」(19年卒者)を見ると、もっとも多かったのは「社員が疲れている」で46.8%でした。次いで、「企業規模の割に大量採用」(41.2%)、「圧迫面接」(38.0%)となっています。
具体的なエピソードとして、「大学内の合同説明会に来ていた社員さんが、『仕事が大変で疲れている』と実感を込めて言っており、恐ろしくなった」「人事以外の人と社内ですれ違い、挨拶したが疲れた表情でスルーされた」といった体験が挙がっています。また、大量採用については「早期退職者が多いのでは」という疑念につながり、圧迫面接については面接での態度が社風に通じると判断しているのでしょう。
――「入社後にブラック企業だとわかったら」という項目も興味深いですね。
武井 19年卒、20年卒ともに最多は「1年は様子を見る(我慢する)」で、およそ4人に1人の割合です。「すぐに辞める」は1割程度でしたが、半年以内に見切りをつけるという回答を合わせると、それぞれ過半数(19年卒58.7%、20年卒51.6%)に達しました。
「ブラック企業でも働き続けられる条件」を見ると、19年卒、20年卒ともに最多は「給与・報酬が高いなら」(19年卒66.7%、20年卒72.3%)となりました。それに、「職場の人間関係が良いなら」「高いスキルが身につくなら」が続きます。労働条件が過酷でも、それに見合った対価が支払われるのなら我慢できるということでしょう。また、今は人材の流動性が高まっているので、高スキルを武器に、より条件のいい企業に転職しようという狙いも透けて見えます。