人手不足による空前の売り手市場が続くなか、就職活動を行う学生はどのような視点で企業選びをしているのか。
就職情報サイト「キャリタス就活」を運営するディスコは、3月に「就活生に聞いた『ブラック企業/ホワイト企業』への考え」を発表した。就活を終えた2019年卒者と就活を始めた20年卒者を対象にした同調査から浮かび上がるのは、ブラック企業を警戒して事前に会社の情報を調べ上げ、働く上ではワーク・ライフ・バランスを大切にするという姿勢だ。
今の就活生は、企業に何を求めているのか。また、どんな働き方を望んでいるか。ディスコのキャリタスリサーチ上席研究員の武井房子氏に聞いた。
有給取得10日未満はブラック企業?
――「ホワイト企業」よりも「ブラック企業」を「気にした(している)」割合のほうが圧倒的に多いですね。
武井房子氏(以下、武井) 就活生にとって、企業がホワイトであるかどうかよりも「ブラック企業には入社したくない」という意識が非常に強いです。「ブラック企業を気にした(している)」という学生は19年卒者で85.6%、20年卒者で91.9%ですが、「ホワイト企業を気にした(している)」はそれぞれ半数程度でした。ブラック企業を警戒しながら就活を進める学生の姿が浮かび上がってきます。
――就活生は、どのような企業をブラック企業と認識しているのでしょうか。
武井 「『ブラック企業』だと思う条件」を見ると、最多は「残業代が支払われない」で8割近く(19年卒77.9%、20年卒78.0%)が選択しています。これに「給与が低すぎる」(19年卒70.9%、20年卒70.1%)が続き、「残業が多い」(19年卒65.3%、20年卒67.9%)、「有給休暇を取りづらい風土がある」(19年卒60.5%、20年卒56.0%)、「セクハラ、パワハラがある」(19年卒63.3%、20年卒65.9%)なども上位になっています。
労働時間に関しては、「残業が多すぎて自分の時間がなくなるのは困る」「残業はあってもいいが、対価はしっかり払ってほしい」という両方の意見があります。つまり、残業代が正当に支払われるのかどうかを心配しており、労働時間に対して給料が安ければブラック企業だと判断するのでしょう。
――セクハラやパワハラなどのハラスメントや、有休を取りづらいといった企業風土も気にしているようですね。
武井 当然ですが、今の就活生はハラスメントのある企業では働きたくないと考えています。また、社会人は基本的に「5日働いて2日休む」というサイクルですが、就活生の中には「朝から晩まで働くことを月曜から金曜まで続けられるだろうか」と心配する学生もいます。そこで、たまには有休を取りたいのです。
今年4月から「働き方改革」により、企業には従業員に年5日間の有休を取得させることが義務付けられましたが、就活生からすれば「社会人はたった5日しか有休が取れないのか」「法律で年5日の有休取得を義務化しなければならないほど、社会人は休んでいないのか」というのが本音です。
――就活生は、何日くらい有休がほしいと思っているのでしょうか。
武井 17年11月に発表した「就活生・採用担当者に聞いた『ブラック企業』の基準」によると、年間の有休取得が10日未満だとブラック企業という意識になるようです。そのため、10日以上はほしいのではないでしょうか。