あるいは、「これはやりたくない」「どうしても興味が持てない」「エネルギーを吸い取られる感じがする」といったネガティブな感情にも、はっきりと気づくようにすることです。そして、日々の仕事の中で、ポジティブな感情を感じられる活動を、少しずつ増やしていくように工夫することです。
以前私の同僚だったAさんは、給与計算や福利厚生の担当に異動になったばかりでした。このポジションは数字などのデータや文書を扱うことが多く、人と接するよりはパソコンに向かい合うことのほうが圧倒的に多い仕事です。しかしもともと研修担当で、大勢の人の前でプレゼンテーションすることが好きだったAさんは、どうしてもこの仕事に情熱を感じることができません。そこで、隔週で行っていた部門内のミーティングで、Aさんは毎回10分ほど時間をもらい、自分で調べた福利厚生のポイントや業界の給与動向などについて、簡単なプレゼンテーションをするようになりました。これはほかの部員にとっても非常に参考になり、本人も楽しむことができました。
このAさんのように、たとえわずかでも意識的に、自分の仕事に前向きな変化を起こせないかと工夫をすることが、自分のキャリアを現実的に変えていくきっかけになります。結局Aさんはその後採用担当になり、また人前で話す機会が増えるとともに、仕事の幅を広げることにもなりました。
いま私たちがやっている仕事のほとんどは、思っている以上に柔軟性があります。全ての手順が1から10まで決まっている仕事のほうが稀なのです。転職や独立、異動など、職場や仕事そのものを変えてしまう前に、「今の仕事を自分の好きなようにデザインし直せないか?」ということを、まじめに考える人がもっと増えて良いと思います。
「下り坂の経済」で働く私たちが、よく理解しておかなければいけないのは、
「会社とは本来、働く人を幸せにするためには設計されていない」
ということです。
「儲かるかどうか」が重要な時代に
「上り坂の経済」だった昭和時代は、「会社の成長発展が社員の幸福とイコール」でした。日本の経営者が持っていた良質な理念が、経済的にも成果をもたらした非常に幸せな時代だったといえます。
しかし本来、私たちが生きている資本主義の社会では、「投資額に対するリターンをどうやって最大にするか」ということが唯一最大のテーマです。えげつない言い方をすると「儲かると思えばどんどん人を採用して投入するし、儲からないと思えば人を減らして投入量を絞り込む」という、きわめて単純な経済原則で動いています。
私は10年以上外資系企業で働いてきましたが、「人こそがわが社の最大の資産だ」「社員はみんなファミリーだ」と言っていた経営者が、四半期の業績が悪くなったとたんに人員削減をやり始める例をたくさん見聞きしてきました。個人的にどれだけ素晴らしい経営理念を持っていても、予算未達のときに株主からのプレッシャーを跳ね返せる経営者は稀です。日本企業も事情は変わらないでしょう。
こういった冷めた目を持ちながら、それでもなんとか自分らしく、楽しく、世の中の役に立つ仕事をしたい、と思ったときに、初めていろいろなやり方が見えてきます。「たとえ雇われていても、会社に頼る生き方はしない」と決意することです。