6月11日の放送のNHK総合ドキュメンタリー番組『プロフェッショナル 仕事の流儀』にカリスマメイド・hitomiさんが登場し、SNS上などで話題を呼んでいる。
hitomiさんは秋葉原の老舗メイドカフェ「@ほぉ~むカフェ」においてメイドカフェの黎明期から今に至るまで、エンターテイメントとしてのメイドカフェの確立に尽力し続けた先駆者である。現在は同店に所属する約300人のメイドたちのトップとして後輩の指導に励む一方、同店を経営するインフィニア株式会社の執行役員としても活躍している。
番組構成はhitomiさん個人の成長に焦点を当てたものになっており、“萌え”の案内人として料理や飲み物にかけるおまじない「萌え萌えきゅん」などをはじめ、個性的な演出を多数発案するまでの葛藤を紹介していた。
メイドカフェそのものの認知度が低く、一部の支持者にのみ開かれていた時期にhitomiさんが馴染めなかった体験や、メイドカフェが世間に広く知られていくにつれてオタク文化の偏ったイメージが広がっていくことへの危機感を抱えながら創意工夫していく、hitomiさん姿が映し出された。それは、hitomiさんが輝ける場を見つけたというよりも、自身が輝ける場をつくっていく過程だった。
接客についてのこだわりは細部にわたり、70ページものマニュアルに明文化した上で、ボディータッチの禁止・店外交遊の禁止などメイドカフェのイメージ向上に取り組む意欲のなかに、“メイドカフェはテーマパークである”との理想が表れている。hitomiさんの取り組みが実り、今では外国人観光客から修学旅行生まで、客層は広がっている。
順調にみえたさなか、2008年に秋葉原通り魔事件が起きた。イメージの悪化に再び苦悩しながらも不安を乗り超えて行く姿から、hitomiさんが繰り返し強調している「メイドカフェを文化にしたい」という覚悟が伝わってきた。
「一つのことを磨き続ける」
かつて「@ほぉ~むカフェ」でhitomiさんの接客を受けたことがある人物は、今回の『プロフェッショナル』を見た感想を次のように語る。
「ひとみん(hitomiの愛称)は2004年頃にメイドカフェができ始めた頃に開業した老舗『@ほぉ~むカフェ』のメイドとして働き、抜群に可愛かったルックスもあり、人気が出始めました。お客さんとメイドの距離をぐっと近づけるという今のメイドカフェのシステムをつくったのは、ひとみんといえるのではないでしょうか。
当時、まだ“萌え”という言葉が一般的ではなかった頃、料理や飲み物に対して『萌え萌えキュン』というおまじないをかけるというサービスも、ひとみんがやり始めたものです。その後、“萌え”という言葉は世間に広まり、流行語大賞に選ばれるまでになりました。プロのアイドル同様、とにかくひとみんはプロのメイドを徹底していて、たとえば“男の影”などを見せたりすることは絶対にありません。まさにプロ中のプロです」
番組終了後、SNS上などでは、
「メイドカフェの特殊なイメージが変わった」
「お嬢様として行ってみたいと思った」
「自分の仕事をがんばろうと思えた」
など、大反響を呼んでいるようだ。
番組ではhitomiさんが「プロフェッショナルとは何か」との問いに対し、「同じことを飽きることなく続けられる人。そしてその一つのことを磨き続ける人」と述べていた。hitomiさんの著書『たった7坪のテーマパーク』(KADOKAWA)を一読してみれば、サービス業に関わる人に限らず、仕事に新たな楽しみを見いだせるかもしれない。
(文=津田土筆)