インスタント麺を選ぶ最大のポイントは……
さて、そうした消費者は、カップ麺の味をどう吟味しているのか。先のH氏が言う。
「安いからまずくてもいいという消費者は、少なくともインスタント麺に関しては日本にはまずいません。どのお客さんも厳しく味を評価して、『まずい』と感じたら2度目はありませんから、そこは開発者側にも厳しい戦いが求められます。傾向とすれば、『麺』と『スープ』とに分けてしっかり味を感じ、価格との総合点で評価する傾向があるようです。仮に麺がいまいちでも、スープが飛び抜けてよければ、総合的に『おいしかった』と感じてくれる場合が多いようです」
日本即席食品工業協会の「平成22年度『即席めん』の摂取・購入状況および意識調査」によれば、消費者がインスタント麺を購入する際に重視する点は、不況を裏づけるかのように「価格」が1位で断然トップ(袋麺75.2%、カップ麺78.1%)。以下、「スープ」(同55.6%、60.4%)、「麺」(同45.5%、50.5%)と続く。
この法則に従えば、中堅メーカーでも日清などの大手に負けないヒット商品を生み出すことは可能だという。H氏が数年前に開発に携わった関東のある中堅カップ麺メーカーでは、麺のおいしさを徹底的に追求した無添加麺の商品化に取り組み、これが業界内で高い評価を受けてヒットにつながった。無添加にした理由も健康志向というよりは、「油や添加物を除去していったら、結果的においしくなった」のだという。
「米食文化の日本人は、常日頃から素材の味を探すクセが染みついている。このため、麺にいろんなものが混ざっていると、素材の味を見つけにくくておいしさを感じられないのかもしれません。つまり、シンプルにするほど素材の味が見つけやすくなり、それをうまいと感じる。麺がうまければスープや具もよりおいしく感じられる、という図式でしょうか。そのうえで、スープに対応した麺の太さや縮れを徹底的に研究することも必要です」(H氏)
実際、このメーカーは中堅ながらも、麺の製造に関してはできる限りの設備投資を行い、一方で商品パッケージ用の写真を社員が自分で撮るなど、コストもギリギリまで圧縮したという。今や国民食ともいえるインスタント麺。普段何気なく食べている商品の裏では、開発者たちの熾烈な戦いが今日も続けられている。
(文=編集部)