コロナ禍、止まらない円安、ウクライナ情勢……。そんな暗い世相を吹き飛ばしてくれそうなのが、“バカ映画”の巨匠・河崎実監督が送る5月20日公開の映画「タヌキ社長」。森繁久彌の「社長シリーズ」のオマージュ作品ながら、「もふもふタマキンエンターテインメント」と銘打つ同作からは“迷作”の香りがぷんぷん漂うが、ヒロイン・坂町房子役で主演するシンガー・ソングライターの町あかりは「世の中の経営者はぜひこの作品を見て学んでほしい」と意外なアピールをする。本当に経営者必見の名作なのか? やはりバカバカしい迷作なのか? 作品の見どころを彼女に直撃した。
――主演映画「タヌキ社長」がまもなく公開されます。どんなストーリーですか?
信楽酒造という日本酒メーカーの社長・信楽矢木雄に恋する女子社員・坂町房子の愛の行方と、ライバル会社の陰謀を描いた喜劇映画です。実は矢木雄はタヌキなんですよ。タヌキの着ぐるみなんです(笑)。観客の皆さんは「一体何を見せられているんだ?」ってびっくりすると思いますが、いい意味で期待を裏切られる展開になっているはずです。少なくとも映画を見ている間は、嫌なことは何一つ思い出さないと思います。今作はクラウドファンディングで皆さんのご支援をいただいて成立した作品でもありますし、勧善懲悪のストーリーなので、すごく幸せな気持ちになれるはずです。
――房子が恋するタヌキ社長とはどんな人物ですか?
タヌキ社長は熱意を持って地道に日本酒造りに取組み、亡き奥さんのことを想い続けていて、社員にも慕われているものすごく人柄の良い理想の社長なんです。すぐに結果が出なくても、お客さんのことだけを考えて、自分の利益を後回しにする姿勢も素敵で共感しました。声は人気声優の関智一さんが演じられていて、貫禄も魅力も倍増していると思います。やっぱり上に立つ人はこうであってほしいと感じてもらえるはず。世の中の経営者の方は、ぜひこの作品を見て学んでもらいたいですね。
――でも、タヌキ社長はタマキン丸出しなんですよね?
はい(笑)。ビジュアルはクランクイン初日に現場で初めて見たのですが、思わず「かわいい!」って声を上げてしまいました。もふもふで、アレがブラブラで(笑)。河崎監督は「もうちょっと揺らして!」って大真面目に撮っていましたし、考えてみれば、信楽焼のタヌキの置物にもアレはくっついていますし、別に変なことではないのかなって。あれ? 私、麻痺してますかね(笑)。
――そのタヌキ社長に恋する役柄だと最初に聞いた時はどう思いましたか?
正直、「タヌキ社長って何?」「彼に恋する女子社員って、どういうこと?」って思いました(笑)。でも台本を読んだら、すごくいいお話で感動しちゃいました。先日、青土社さんから「町あかりの『男はつらいよ』全作品ガイド」という本を出させていただいたのですが、私は寅さんのような人情味にあふれた人たちが出てくる映画が大好きなんですよ。最初は戸惑いましたが、「タヌキ社長」は素敵なセリフがたくさんありますし、どんどん素敵な映画だなって印象が変わっていきました。
――町さんにとって今作が初主演です。本業はシンガー・ソングライターですが、劇中では歌も披露されました。
劇中では、私が作詞・作曲した挿入歌の「Am I A bit strange?」とエンディングテーマ「ポンポコポン(お月様の下で)」をほぼフル尺で歌わせてもらいました。主演どころか、実はちゃんとしたセリフのある役柄を演じるのは、今回が初めてなんです。監督は「大丈夫。なぜか歌っている人はできるんだよね。よろしく!」みたいな感じだったので、下手にうまく演じようとはせず、普段の私のままでいいんだろうなって信じて演じました。でも、やっぱりお芝居は緊張しましたね。歌唱シーンだけは「やった! 歌だ!」って、自分のステージのつもりで気持ちよく歌うことができました(笑)。
――お笑いコンビ・レインボーさん、ショウショウさんら共演陣が劇中で繰り広げる抱腹絶倒のネタも見どころのようですね。
同僚社員役のレインボーさんのやり取りはコントそのものでしたね。女装の達人・池田直人さんが演じる女子社員はどこから見ても女子にしか見えないですし、アドリブ連発だったんですよ(笑)。きっと日頃から世の中の女子を観察して、女子ワードをストックしているんだと思います。部長役のショウショウさんもオフィスのシーンで漫才をたっぷりと披露されていますし、現場ではずっと笑いっぱなしでした(笑)。その他にも吉田照美さん、モト冬樹さん、掟ポルシェさんなど俳優が本業ではない方たちが多く出演されていて、皆さんの芸と才能が詰まった映画になっているのも今作の魅力の1つだと思います。
――最後に「タヌキ社長」の見どころを改めてお願いします。
経営者の方は必見みたいなことも言いましたが、簡単に言うと、ただのアホなバカ映画なんです(笑)。河崎監督自身も「“おバカ”じゃなくて“バカ映画”」って言ってましたし。でも、世間の皆さんはこの2年間、自分のことや世界情勢などいろんなことを一生懸命考え続けてきたと思います。もう、ここら辺で真面目に考えるのを一旦休憩して、自分を甘やかして嫌なことを忘れる時間も大事だと思うんです。この「タヌキ社長」は何も考えずに、ただ「あはは!」と笑うにはぴったりの作品です。ぜひ映画館に足を運んでご覧いただければと思います!
(構成=中野龍/フリーランスライター)