「ナイスですね」「お待たせしました、お待たせしすぎたかもしれません」の名文句でおなじみのAV監督、実業家の村西とおる氏。80年代に一世を風靡した「AV界の帝王」は、その栄光と凋落を描いた山田孝之さん主演のNetflix配信ドラマ「全裸監督」「全裸監督2」のモデルとして再び脚光を浴びている。
ハワイで懲役370年を求刑されるも見事生還。事業に失敗し50億円の借金を背負い、債権者から死を迫られてもなお、不屈の精神で返り咲いた村西とおる氏の半生を綴ったのが『「全裸監督」の修羅場学』(村西とおる著、徳間書店刊)だ。本書は「週刊アサヒ芸能」に連載中の「全裸で出直せ!」に加筆・修正を加えた実録エッセイである。
「人生、死んでしまいたい時には下を見ろ!俺がいる」
著者の村西氏は、福島県立勿来工業高校卒、 上京後、バーテンダー、英会話セットのセールスマン、テレビゲームリース業を経て「裏本の帝王」となるが全国指名手配となり逮捕される。その後、AV 監督となって今日に至る。 前科七犯。これまで3000本のAVを制作し、「昭和最後のエロ事師」を自任し、「AVの帝王」と 呼ばれている。このあたりは「全裸監督」で描かれているものでもある。
波瀾万丈という言葉が安っぽく聞こえるほどのアップダウンの大きな人生の末に辿り着いた人生観が、本書からは垣間見える。
「資金繰りがつらくなったから、もうダメだ、死にたい」と中小企業のお父さんが村西氏のところによく相談に来るという。そんなとき、「人生、死んでしまいたい時には下を見ろ!俺がいる」と話す。
「私の50億円の借金と比べて、あなたさまの借金はたったの7000万円です。私は前科7犯ですが、あなたさまは前科などは何もない。その上、私は数百万人の日本国民の皆さまに、女房とイタしているところをご覧いただき、エンドウ豆大のイボ痔もご披露しているのに、あなたさまはそうした生き恥を町内会の皆さまにだってさらしていることは何もなさっておられない。人間、上を見たらキリがありません。死んでしまいたいと思った時には下を見てください。ずーっと下です。そこにいる私を発見するはずです」
そう話すと、相手の顔に生気が戻り、元気になって帰っていくという。自分よりももっと酷い人生を生きている人間を知ると、「まだ俺は大丈夫じゃないか」と再びやる気が出てくる。閉塞した時代、自分の存在意義はそこにあるように考えると、村西氏は述べる。
数々の修羅場をくぐり抜け、波瀾万丈な人生のエピソードを本書で読むと、自分の悩みはまだまだたいしたことではないと思えるかもしれない。村西氏の生き方から元気をもらってはどうだろう。(T・N/新刊JP編集部)
※本記事は、「新刊JP」より提供されたものです。