どんな状況でも、チームとしての目標達成のために全力を傾ける。そんなタフな部下が揃っていたら、上司としては頼もしいものです。しかし、そんな思いもむなしく、部下がなかなか一人前に育たない、チームとしてまとまらない、といったことに頭を悩ませているというのが多くの上司、管理職の現実なのかもしれません。
『こうして、チームは熱狂し始めた。』(すばる舎/刊)の著者、近田哲昌さんはサイバーエージェントの営業チームを率いて、圧倒的な成績を収めた凄腕の管理職。
本書で近田さんは、自らが築き上げてきた、部下の育成とモチベーション管理のノウハウを明かしており、その内容は、どの企業、どのチームでも必要な、普遍的なポイントが押さえられています。
ワンパターンな指示出しはダメ、3つの動機を使い分ける
上司が部下を動かす時、その指示出しは命令口調のワンパターンではなく、「やりたい」「やらざるを得ない」「やれる」という3つの動機づけを使い分けることが重要になります。
例えば、まだ信頼関係が深まっていない部下に難易度の高い仕事をさせる時は、その仕事がチームとして「やりたい」ものであることを伝え、その意義を理解させる必要があります。難しい仕事はやること自体に大きなストレスがかかるため、頭ごなしに「やりなさい」と命じてしまうと長続きしないのです。
反対に、「やりなさい」と命じないといけない仕事もあります。それは、成果を出すためにチームとして「やらざるをえない」仕事です。繁忙期で、自分のチームだけは毎朝定時より早く出社させたい時などは、上司の権限として「やりなさい」と命じる覚悟を持たないといけません。
また、仕事の難易度に関係なく、やり方がわからないために行動を起こせない部下に対しては「やれる」という動機づけを与えます。「~というふうにやれば、○○君でもできるかな?」というように、まず「やれる」ことを伝えたうえで、そのやり方も教えましょう。
自信を失った部下への対処法
やったことがうまく結果に結び付かないと、部下は自信を失ってしまいます。それをうまく立て直して、またモチベーションが上がるようにしてあげるのは上司の務めです。この状況に対する近田さんのスタンスは「立ち直るまで放っておく」というもの。しかし、ただ放っておくのではなく「キミの分まで私がやるから、安心して見ていろ」という姿勢を示すといいます。
そして、面談や飲み会などの席では「自分としては、次はこういうことにチャレンジしたいから、後のことはキミに任せたい」と、部下への信頼感を見せつつ、目先の不調から未来のビジョンに目を向けさせる工夫をしているそうです。「自信を持て!」と励ましても、部下の自信は回復しません。温かく見守りつつも、部下が立ち直りやすい環境をさりげなく用意してあげるというのが、上司としての正しい気づかいなのかもしれませんね。
部下のモチベーションを上げ、ひとつの方向に束ねるために、上司としてケアしないといけない点は数知れません。部下のために、チームのために、そして自分のために。上司・管理職にとって近田さんのマネジメントは学びとなるはずです。
(新刊JP編集部)
※本記事は、「新刊JP」より提供されたものです。
『こうして、チームは熱狂し始めた。』 「リーダーが、みんなで頑張ろう! と叫んだだけでは、チームに火は点きません。チームが発足するときに、メンバーに最初に伝えることが1つあります」 部下の心に自然と火が点いてしまう「しかけ」とは何か?