研究者というと、どんなイメージを持っているだろうか。自由気まま、興味関心のある分野を突き詰めている。いつも何か難しそうなことを考えていそう…そんなイメージが強いのではないだろうか。
実際の研究者とはどういう職業なのか、どんなことを考え、どんな悩みを抱えているのか。
意外と多岐にわたる!? 研究者の日常業務
『脳研究者の脳の中』(毛内拡著、ワニブックス刊)では、昨年『脳を司る「脳」』(ブルーバックス)で 講談社科学出版賞を受賞した脳研究者、お茶の水女子大学助教の毛内拡氏が、脳研究者って「脳みそ」を具体的にどう扱うの? 実際、脳研究はAIに役立つの? など、自身の経験をもとに「研究者という生き物」の生態を紹介する。
試験管をふったり、黒板に難しそうな数式を書き殴ったり、部屋に閉じこもって黙々と研究している。というのが、研究者の仕事の世間のイメージかもしれない。しかし、実はそんな研究者は稀だという。「足で稼ぐ」ことが求められるのも研究者の意外な一面だ。
研究者も人に会い情報交換をしたり、共同研究の打ち合わせをしたり、技術やアイデアを売り込みに行ったりといった外回りの仕事もある。また学会などでは、社交性が試される場面もある。さらに、教育と啓蒙活動も研究者の重要な使命の一つ。大学や高校で授業として教えたり、本を書いたり、テレビに出たりすることで、最新の研究成果をわかりやすく解説するのも大事な仕事だ。
このような一般向けにわかりやすく研究成果を伝える活動のことを、アウトリーチ活動という。特に最近、大学や研究機関でこのアウトリーチ活動が重要視されており、広報活動やアウトリーチ活動をサポートしてくれる専門家が所属し、指導にあたっているケースもある。
では、研究者とはどんな人たちなのか。すごく理屈っぽくて、分析したがる。根拠がないことを嫌って、何でも疑ってかかる。なんか付き合いづらい。というイメージは、ほぼ合っている。なぜそういう人が多いかというと、研究者になるためにそういう教育を受けてきたからだ。
研究では、徹底的に疑うことが叩き込まれる。そういう教育を受けた結果、研究者は回りくどい、理屈っぽい言い方をするようになる。一見、優柔不断な人に見えるかもしれないが、しっかり教育を受けた研究者であればあるほど、ものの言い方が慎重になる。研究というのは、白か黒かではっきり色分けするよりは、「こういう条件の場合では、そうなる傾向にある」というようにグラデーションをつけていく作業。そう主張できる確固たる証拠がない限りは断定することは難しいのだ。
視聴者からすると、専門家、研究者なのだから、曖昧な言い方をせずにズバズバと白黒つけてほしい、と思ってしまうところだが、研究者にも、研究者ならではの事情があったのだ。なので、断定的なことばかり言う研究者がいたら要注意だという。
私たち一般の人が研究者の活動を見る機会は、本やテレビ番組、ネットの情報などが主だろう。本書から、研究者の実際の仕事やどんな人なのか、毛内氏の脳研究の研究者の事情など、研究者の裏側を覗いてみてはどうだろう。今までとは違ったイメージを持ったり、より身近に感じられるようになるはずだ。(T・N/新刊JP編集部)
※本記事は、「新刊JP」より提供されたものです。