外食産業、なぜ離職率高い?低賃金、長時間残業が横行する構造的問題と経営側のマインド
ブラック企業ランキング常連の業界といえば「外食産業」だ。厚労省の統計によると、大卒3年後の離職率は2009年度で48.5%。直近7年の数値を見ても、45.7~54.4%の範囲で推移している。同年度における全業界の平均値が28.8%だから、あらゆる業界の中でも極めて高い割合であることがみてとれる。
では、なぜそんなことになってしまうのか。労働環境が悪い企業だけが叩かれがちだが、それだけではない。大きな原因として、業界の「構造的側面」「経営的側面」「日本的メンタリティ面」の3つが挙げられる。
●「構造的側面」
【需要不足なのに供給過多】
飲食市場規模は縮小しているにもかかわらず、労働者数と一部業態の店舗数は以前よりも増えている。
市場全体の売上高は1997年の約29兆円、店舗数は91年の85万店がピークで、その後10年でそれぞれ20%近く減少している。しかしその間も、居酒屋業態の店舗数は10%増加、同業態に従事する労働者数は386万人から440万人へと14%増加している。小さい市場規模の業界に、多くの労働者がひしめいているわけだ。
【労働集約型で、人件費割合が大きい】
単純労働力の提供が収益の源泉となっており、機械化が難しく、売り上げに占める労務費の割合が高いため、給与が圧縮対象になりやすい。
●経営的側面
【高度なスキルは不要で、労働力確保が容易】
多くの仕事が単純作業で、高度な知識や経験は不要であることから、採用対象となる母集団は数が多いために労働力が集まりやすく、仮に誰かが辞めても「また雇えば問題ない」というイメージができ、経営側にとって「誰でもできる」「代わりはいくらでもいる」という考えになりやすい。結果的に「人を育てる」意識が低くなり、低賃金でこき使いやすくなる。
【経営陣の努力不足、アイデア不足】
経営者が安易に「値下げ」や「営業時間延長」に走ってしまうと、しわ寄せが従業員に来ることになる。「労働基準法なんか守っていたら、利益は出せない」などと開き直り、薄給で責任感をもって頑張ってくれる社員に甘えて、利益が出るシステムをつくってこなかった経営者の責任は重い。
【採用での情報提供】
応募者減を避けるため、採用時には「昇給する」「社風がいい」など、耳に聞こえのいいことしか言わず、「ハードワーク」とか「重いプレッシャー」といったネガティブな情報を故意に伝えない。結果的に応募者の心構えが足りず、入社後ミスマッチを感じて辞めてしまうことに。