–市居さんがボランティアとして、オリンピックの運営に携わるようになったきっかけを教えてください。
市居愛氏(以下、市居) 私が米インディアナ州ボールステイト大学大学院のスポーツアドミニストレーション学科に在学していた時、単位を取得するために企業でのインターンシップ経験が必要になりました。そこで、オリンピックでのボランティア活動を単位として認めてほしいと担当教授に交渉して、シドニーオリンピックのボランティアに応募したのです。世界で最も規模の大きいスポーツイベントで働いてみたいと思っていたからです。
–応募から採用が決まるまでには、どのようなプロセスをたどるのですか?
市居 大会によっても違いはありますが、通常、ボランティアの求人は、オリンピック組織委員会の公式ホームページに、開催の2年前に掲載されます。そこで登録をして、開催の半年前に会場別・職種別の求人が告知されたら願書を提出し、3カ月前に面接や電話インタビューで選考が行われます。私の場合は、電話インタビューを受けた後、開催1カ月前に現地入りして面接を受けました。ただ、ボランティアのなかでも医療スタッフやアロマセラピストなどの専門職は、各競技団体が個別に起用しています。
–面接では、どんな質問を受けるのでしょうか?
市居 やりとりを通して英会話能力を確認していると思われるのですが、突っ込んだ質問はされませんでした。面接は国籍の違う3人の応募者に対して面接官1人で行われ、質問内容は、「今やっていることは何か?」「チームワークで大切だと思うことは?」などです。私は、「人と話すことが好きで場を盛り上げることがチームワークには大切だと思う」と答え、採用されました。
–ボランティアの人数は、どれくらいだったのでしょうか?
市居 シドニー大会で5万5000人、アテネ大会は4万5000人、北京大会は7万5000人、ロンドン大会は7万人だったといわれています。オリンピックの運営には膨大な数のボランティアが関わるのです。1896年の第1回アテネ大会から36年のベルリン大会までは兵役とボーイスカウトに支えられていましたが、1948年のロンドン大会から一般のボランティアが参加しています。