2020年の東京オリンピック開催が決まり、東京はこれからどういう都市に変化していくのだろうか。
これまで滞っていた構想が再開されるかもしれないし、新しい構想も考えられているかもしれない。
本書『東京2020計画地図』(東京都市計画研究会/編、かんき出版/刊)は、2020年までに開発の実現性が高いプロジェクトの着地点を探り、まとめた一冊だ。
東京の6年後。その未来像は2つの方向性がある。
1つ目は、ハードとしての都市の進化。鉄道新設や拠点開発だ。政府は、訪日外国人旅行者数を2020年までに2000万人にすると発表した。空路は羽田空港の国際化で、24時間化が拡充し、海路については大型客船サービスがつくられる。
拠点開発でいえば、競技場を抱える江東区はすでに人口急増がはじまっているといい、選手と観客の受け入れまで考えると相当な対策が求められる。海外からの訪問者が数多く足を運ぶ銀座を抱える中央区は、晴海に選手村ができ、オリンピック後は一般住宅に転用される。
2つ目は、ソフトとしての人間らしさの回復だ。江戸の街には水路が張りめぐらされ、人の移動も物の運搬も舟が中心だった。しかし、それらは時代を経て、近代化の邪魔になるからと地下に追いやられ、その流れを助長したのが前回の東京オリンピックである。川を埋め尽くすかのように首都高速道路を張りめぐらし、主要道路を拡張しようと樹木を切り倒し、江戸以来の情緒を残していた東京の風情は壊されていった。
こういった経緯のある東京の街だが、2020年に向けて、「機能性を求めたコンクリートのかたい街から、江戸に見られた自然の息づくやわらかい街へ」という思いから、臨海部とそこに流れ込む川や運河の再生、埋められた川の復活、水辺を楽しむ空間づくりの話が出ているという。
「水都を壊したオリンピックから、これを取り戻すオリンピックへ」と、多くの関係者が真剣に取り組み始めているのだ。
交通網の整備も進むことが予測される。オリンピック全37競技のうち、17が臨海部に配置される江東区が永年抱えているのが、臨海部の「足」の問題だ。現在、北部の都市と南部の臨海部を結ぶ鉄道がすっぽり抜けているのだ。
都心に向かう東西の路線はあるものの、南北はないことから、鉄道で移動しようとすると、いったん都心部に出て遠回りしなくてはいけない。
江東区民が、オリンピックが開通を早めるきっかけになるかもしれないと大きな期待を寄せているのが地下鉄8号線の延伸だ。北部にある住吉駅から南部にある豊洲駅を縦につなぐ路線である。
もともと2015年度までに建設が始まる予定だったもので、江東区を中心に国、東京都、東京メトロが具体化の検討を重ねてきている。