岩瀬 やっぱり、他人の力をうまく借りることがすごく重要なんです。基本的に人間って、「助けてください」とか「ちょっと相談があるんですけど」なんて若い人から言われたら、「おっ、なになに? 相談? よし、ちょっとお茶でも飲もうか」ってなるじゃないですか。「相談があるんです」と言われて気分を害する人なんて、いないんじゃないかな。
中川 頼られている状況って、うれしくなりますからね。
岩瀬 結局、仕事って、いかにしてみんなの力を貸し借りしながら結果を出していくか、という営みなんです。自分ひとりでどれだけ頑張れるかを競うものではまったくない。そこで大切になるのが、こういうことは誰が得意で、誰が苦手としているか、といったことを早くつかめるかどうか。同僚の得手不得手を知っておくことは、とても大切でしょう。
加えて、もうひとつ知っておきたいコツは、つい助けたくなるような、上手な甘え方。といっても別に難しいことじゃありません。例えば、何も準備せず、整理もしないまま「コレってなんですか?」「どうすればいいですか?」と唐突に問われると、ときには腹が立ったりします。だけど、「いちおう自分なりに考えてみたんですけど」とA4用紙1枚に箇条書き程度でいいから、問題点やポイントなどを大まかにでも整理して持っていけば、上司も「こいつなりに一応考えてきたんだな、かわいいヤツめ」と思うもの。そういう、最低限の礼儀を押さえておけるかで、人の力を借りるスキルが格段に上がります。こういうことって、高学歴だとか地頭がいいとか関係ありませんから。ちょっとしたコツを知っているかどうか、実践できるかどうかの違いで。
中川 これで、大抵の仕事の悩みに結論が出てしまったも同然じゃないですか。仕事なんて、学歴や職歴うんぬんに関わることより、ちょっとした配慮とか、常識とか、コツを押さえておけばできるようになる事柄が多いというね。
岩瀬 特に悩んでいる若手には、ぜひ知っておいてもらいたいことですよ。
「仕事で実現」の弊害
――昨今は、自分に合う仕事とはなんなのか、仕事で自己実現したい、といったことで悩んでしまうような風潮もあるようですが。
中川 『プロフェッショナル 仕事の流儀』(NHK)とか『情熱大陸』(MBS)とか観すぎなんですよ(笑)。優れたビジネスパーソンに憧れて、「いつかはオレも取材されて」みたいな妄想を膨らませてしまう。もしくは、「彼らに比べて今のオレは……」なんて、余計なコンプレックスを抱え込んだり。SNSやブログで意識の高い発言をして、パーソナルブランディングにこだわって……
というのも、ネットツールやサービスがもたらした弊害といえるかも。それらのウェブサービスがあることで、自己表現欲求とか自己実現への意識が高まった側面はあるでしょう。自分がまるで、いっぱしの論壇の一員になったような錯覚を覚えたり。
岩瀬 だから自分の意見はどんどん言うし、聞いてもらって然るべきだと思ってしまうと。
中川 ええ。で、フェイスブックやブログのコメント欄とか、ツイッターのリプライとかで「鋭い意見ですね」とか書かれて悦に入る、みたいな。