今回は、声優・ナレーターとして、テレビ番組『とくダネ!』(フジテレビ系)のナレーションをはじめ、アニメや洋画の吹き替えなど、場面によって幅広い声を使い分けている寺瀬今日子氏に、ナレーションや仕事相手の心をつかむコツについて話を聞きました。
●意外な声優のテクニック
–声優は、映画やアニメの吹き替えのほかに、どのような仕事が多いのでしょうか?
寺瀬今日子氏(以下、寺瀬氏) 私はワイドショーやニュース、バラエティー番組と、多くのテレビ番組のナレーションを担当してきました。実はニュースやワイドショーのナレーションの多くは声優が担当しているのです。恐らく、視聴者の方の多くはアナウンサーやレポーターが担当されていると思っているのではないでしょうか。
–なぜアナウンサーではなく、声優がナレーションを担当するのでしょうか?
寺瀬 局や番組によって方針は異なると思いますが、いろいろな話題やテーマに対応する声のバリエーションを持っているということが大きいと思います。実はワイドショーは、事前にナレーションを収録せずに、生放送でVTRに合わせて読んでいるのです。原稿もギリギリに渡され、タイムキーパーの指示に従って読むので、かなり大変な仕事です。
–生放送ならではのテクニックが必要になるのでしょうか?
寺瀬 私が担当しているのは業界用語で「生ナレーション」というものです。生放送ですから、現場はいつも刻々と変化する状況に対応しています。動じることなく、ナレーションを読むには、高い集中力が要求されます。当然、ナレーションでも、芸能ネタと事件ネタを読む時には、声のトーンを変えて読みます。声の引き出しを多くすることが大切なのです。
また、早く読みすぎて時間が余ったら語尾のスピードで調整したり、時間が足りないようであれば句読点を抜かして時間を調整するなどのテクニックがあります。
–高い緊張感の中で集中力が要求されそうですね。
寺瀬 原稿を読み間違えたら、そのまま電波に乗ってしまうので、とても緊張します。そういった意味ではシビアな世界だと思います。
–声優は仕事を得るのが大変な仕事だと聞きますが、仕事を得るためにはとのようなことが必要になるのでしょうか?
寺瀬 声優の世界は、大手事務所がひしめき合う激戦の場ですので、事務所の力が大きな要素になります。また、たいていの仕事は、オーディションを勝ち抜く必要があるのですが、それには相応のスキルと運が必要とされます。