2014年の敬老の日、65歳以上の人口は25.9%、そして8人に1人が75歳以上だというデータが発表されました。さらに、高齢単身世帯は平成25年で約552万世帯となっており、5年前の平成20年の約414万世帯から、約140万世帯も増えていることになります。
今のところは親が健在でも、5年後、10年後はどうなるか分かりません。すでに老後に入っている親がいる人にとっては、極めてリアリティのある問題であるはずです。主婦の友社から出版されている『親の家を片づける』シリーズ(主婦の友社/刊)が累計発行部数12万部を超え、読者から支持を集めているのも、理解できるでしょう。
シリーズ最新作となる『親の家を片づける お助け便利帳』(主婦の友社/編集、主婦の友社/刊)は、迷った時、困った時の対処方法が書かれているビジュアルムックで、メモを取りながら片づけを進められる実践的な一冊。その中には、以下のような2組の対照的な家族のエピソードが掲載されています。
■ひとりっ子の「親家片」(おやかた)、両親の老いのスピードに呆然…。
母親が乳がんになり、手術。そのショックもあったのか、父親は70代で認知症となり、さらに退院した母親も間もなくアルツハイマーに。今度は父親が脳梗塞で倒れ、両親の症状はひどくなり、近所からはクレームが届くようになりました。中道弘子さん(仮名)はひとりっ子。いつか親の面倒を見なければいけないと覚悟していたものの、ものすごいスピードで老いていく親の姿に呆然とするばかり。そして、結局施設に入ることになりました。
親たちが住んでいた公営の賃貸住宅から退去の催促がきて、中道さんの「親家片」が始まるのですが、やはり両親の家。勝手に親のものを処分していいのか、寂しく悲しく、胸が締め付けられる思いだったといいます。また、部屋のあちこちから現金が見つかり、まるで宝探し状態…。「あれ、どうした?」と母親に聞かれて「捨てた」とは言いたくないもの、例えば着物や貴金属などは自分の家に運んだといいます。
家族や息子たちの友達の手伝いもあって、3ヶ月で片付けを終わらせ、それから数年の間に父親、母親、順に見送りました。寂しさはあったものの、介護と親家片をやり切った感はあったと中道さんは言います。
■部屋の荒みから両親の老いを感じて…
川島久代さん(仮名)の母親が体調を崩したのは、2001年のこと。典型的な「男子厨房に入らず」タイプだった父親は家事が全くできず、老親2人の日常生活に支障が出ます。川島さんは夫婦ともに自営業をしており、子どもがいなかったことから比較的自由がききました。要介護の母親はある程度ヘルパーに任せましたが、父親はシルバー人材センターの有償ボランティアにお世話になることも。それでもやれることは限られていたため、少しずつ部屋は荒れていきます。その様子を見た川島さんは、両親の老いそのものが浮かび上がっているように感じられたそうです。
週末に実感に通うという生活が7年続いたとき、偶然にも川島さんの家から徒歩数分の場所に介護付き有料老人ホームがオープン。半年かけて父を説得、両親はホームの夫婦部屋に入居しました。しかし、その3ヶ月後、母親が急逝。父親はスタッフのサポートもあり、2年近くマイペースに暮らしました。2年間、毎日父親の元に通っていた川島さんにとって、その時間は、「宝物」と思える時間だったそうです。