ルンバ成功のカギ、ニーズの断捨離とは?「すべての人に安く」から「5%に光るモノ」へ
しかし当然ながら、20人中1人しか興味がない状態ではビジネス規模は小さい。
そこで次に必要なのが市場開拓だ。20人のうち1人ではなく、半数近くが「ぜひ欲しい」というような市場を開発していくのだ。そのためには、顧客の課題をより深掘りし、解決策を広げていく必要がある。連載第1回記事で紹介したおそうじロボット「ルンバ」は、まさにそのようにして成功した商品なのだ。
市場調査会社シードプランニングの調査によると、おそうじロボットの国内市場規模は、2010年に26万台だったが、18年には90万台になると予想されている。しかし、08年から10年にかけてこの市場は、なんと6倍に増えている。つまり08年はわずか4~5万台という極めて小さな市場規模だったのが、急速に拡大したのである。
今やおそうじロボットの代名詞となったルンバは、誰もが製品写真を見ると「あ、これはルンバだね」と答えるようになった。しかし6年前の08年、ルンバの写真を見ても、ほとんどの人はそれが何かは答えられなかっただろう。知る人ぞ知る存在だったのだ。そして数少ない顧客の課題を深掘りして商品を強化し、市場を開拓して、ルンバは急成長しているのだ。
間違えてはいけないのは、断捨離するのは「ニーズ」であって、「市場」ではない点だ。絞り込むべきは、「少々高くても、絶対欲しい」という顧客のニーズ。この顧客が誰か、どのようなニーズを持っているのかを見定め、解決策によって発掘し、大きな市場に育てるのである。
そしてその出発点は、たとえ20人に1人であっても「ぜひ欲しい」という顧客を見つけだし、その顧客のことを徹底的に理解することから始まるのだ。
●日本市場で磨き、世界へ投入する、海外有力メーカー
実はこのことに気がついている海外有力メーカーは、日本市場を重視している。例えばアイロボットのコリン・アングルCEOはインタビューで、「日本の顧客を幸せにできれば、世界中の顧客を幸せにすることができる」(4月1日付東洋経済オンライン記事)と語っている。日本市場で商品を磨き上げて、世界で勝負する方針だ。
アイロボットのライバルとなる英ダイソンも、15年春に、世界に先駆けて日本でロボット掃除機を先行販売する。ダイソンが日本で先行発売するのもまた、消費者の目が厳しい市場で商品を磨き上げるためだ。日本の消費者のモニターを募集し、発売前に準備期間を設けて商品の最終調整をし、日本市場で磨いた商品で世界市場に挑む。