(潮出版社)
パナソニックとソニーがいかにグローバル化したといっても、彼らにとって日本がまだまだ重要な市場であることに変わりはない。実際、パナソニックは53%を、ソニー(エレクトロニクス部門)は28%を国内で売り上げている。では実際のところ、両社の製品のどの程度の量が、どんな販売経路で消費者の手に渡っているのどろうか?
ある大型量販店の関係者は、製品の流通に関する家電業界の実態を次のように説明する。
「家電業界における販売量のシェアは、一応、ヤマダ電機を始めとする大型量販店7割、地域店(いわゆる町の電器店)2割といわれています。ですが実際には、メーカーが直接卸している量の7割が大型量販店へ、2割が地域店へまず行くというだけで、そこからさらに何割かは、別の地域店やネット店、現金問屋などへ流れています。よって、実質的な大型量販店の販売量は7割には届かず、逆に地域店の販売量もいわれているほど少なくないのです」
メーカーと直接取引する大型量販店や地域店がそうした行動に出るのは、「ボリュームディスカウント制」があるからである。メーカーから商品を一定量以上まとめて仕入れると仕入れ値が安くなるため、一部売れ残るのを承知の上でメーカーから大量に買い込み、さばききれない分を、仕入れ値に若干上乗せして、メーカーとは直接取引できない新興の地域店やネット店などに売るのだ。そうすることにより、大型量販店などは商品を安く仕入れられるだけでなく、多少なりとも利ざやを稼ぐことができ、また倉庫代などの在庫管理費も浮かせられるというわけだ。一方、横流し品を買い取る側も、大型量販店とほぼ同じ価格で商品を仕入れられるというメリットを享受できる。
そうした商品の横流しは、大型量販店等とメーカーの契約上認められていないが、暗黙の了解になっており、「価格.com」の安値常連ショップの中にも、そのようにして大型量販店などから商品を仕入れている店は多いという。
それでは、社会の注目が大型量販店の販売競争にばかり集まっている昨今、60~70年代に爆発的に普及し、その後、大型量販店・ネット店の増加で衰微した各メーカーの系列店(「パナソニック」「東芝」などの看板を掲げた町の電器店のこと。契約メーカー以外の製品も扱うが、契約メーカーの製品を売るとインセンティブがある)は、どんな状態にあるのだろうか? 東京都中野区を拠点とする「スーパーパナソニックショップ」で、積極的な事業展開で注目を集める光明電機の高野亨専務取締役はこう語る。
「大型量販店の増加などによって、どのメーカーも小規模な系列店へのケアが行き届かなくなり、現状、かつてと同様の状態を保っているのは、57年の誕生以来、国内最大の地域店ネットワークであり続けている『パナソニックショップ』くらいではないでしょうか。
パナソニックによる系列店への手厚いケアは業界でもよく知られていて、営業マンを介した現場との連携も密接です。販売業績のいい系列店は、大坂や東京などで毎年1回、パナソニックの会長、社長はじめ役員総出で高級ホテルを貸し切って行われる表彰式に招待されたりもします」(高野氏)