米メジャーリーグのレンジャーズ・ダルビッシュ有投手が、メジャー1年目でオールスター選手に選ばれた。結局出番はなかったが、彼が一流であることの、確かな証明になったといえよう。
一方、日本のプロ野球。今年、宮本慎也(ヤクルト)と稲葉篤紀(日本ハム)というふたりの“おじさん”が、そろって2000本安打を達成し話題となったが、彼らは、イチローやダルビッシュのように、メジャーリーグからオファーがくるような一流選手ではないだろう。
脇役の一流
宮本は自分のことを「脇役の一流」と言ったが、デビュー当時は「あんな非力なヤツがプロで通じるはずがない」といわれていた。稲葉も他の球団が目もつけていなかった頃、野村克也監督(当時)たっての希望でヤクルトに拾われたというのは、よく知られている事実だ。
以前はともに同期としてヤクルトに籍を置き、40歳前後で2000本安打を達成したという点が、多くのサラリーマンに感動を与えた。
「一流」とおだてられ米国に渡ったはいいが、メジャーで通用せずボロボロになって、日本に帰ってすぐに引退……というケースに比べて、宮本や稲葉のほうがうんとかっこいい。生涯年俸を考えても、中途半端にメジャーにいくよりは多いかもしれないし、野村克也氏がいうように、将来の有力なプロ野球監督候補でもある。
そして、彼らの価値は、本人の安定した継続的な働きもさることながら、「背中を見よ」とばかりの、チーム全体に対する貢献度が計りしれないことだ。企業のリーダーなら痛いほどわかると思う。
「一流の中の二流」よりも、「二流の中の一流」を目指したい。その結果「一流の中の一流」になるかもしれないし、「二流の中の一流」で終わっても、ゴマをすりまくったり、人間関係で神経をすり減らしたり、無理して健康を害するよりもよっぽどよい。長く自分を生かしきり、周りを喜ばせる自分でありたい。それは、野球であってもビジネスであっても変わらない。
万年ヒラが実は一流?
宮本や稲葉ほど華々しくはないが、ある企業の中年ヒラ社員・Aくんを僕は尊敬している。A君は、電機メーカーで商品企画のための市場調査部に所属している。店頭で実際に新商品を売ってユーザの反響をキャッチしたり、新製品を買ったユーザの家庭まで訪問して使用実態を聞いたり、モノ系雑誌の編集者に商品を提供し意見を聞いたりする。