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ビックカメラ創業者が会長に復帰の裏事情

ヤマダ会長「家電量販店は3社に集約」家電業界戦国時代に突入

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post_646.jpgまあるい緑の山手線外にも結構あるビックカメラ
(「wikipedia」より)
 ビックカメラの創業者で筆頭株主の新井隆二氏(66)が9月1日、会長に復帰した。ただ、新井会長は代表権を持たないばかりか取締役にも就かない。この人事の狙いを「創業者の指示を仰ぎやすい体制にするため」としている。経営への助言だけなら、これまで相談役としてやってきたことと変わりはない。09年2月に代表取締役会長から相談役に退いた後も重要な経営判断について、宮嶋宏幸社長(52)ら経営陣に助言してきたはずだ。今年6月のコジマの買収も、新井氏がゴーサインを出さなければ実現しなかった。

 新井氏の会長復帰を巡りさまざまな憶測が飛び交っている。「業界再編が加速すると判断し、次の再編の陣頭指揮を執るため」(業界関係者)との見方が多い。かつてないほどの家電不況が会長復帰を決意させたことは間違いないだろう。

 2000年代前半はパソコンが、後半は薄型テレビがエレクトロニクス業界を引っ張ってきた。11年7月の地上デジタル放送移行前には薄型テレビが飛ぶように売れたが、これは需要の先喰いでしかなかった。地デジ移行、家電エコポイント特需の反動もあって看板商品の薄型テレビが、さっぱり売れなくなった。薄型テレビに続くヒット商品は、まだ登場していない。

 家電不況が家電量販店の再編の背中を押し出した。ビックがコジマを買収したのに続き、7月にはヤマダ電機がベスト電器を買収した。その結果、ヤマダ・ベスト、ビック・コジマ、エディオン(店名・デオデオ、エイデン)、ケーズホールディングス(HD)(同・ケーズデンキ、テンコード)、ヨドバシカメラ、上新電機の6グループに再編された。

 業界最大手、ヤマダ電機の山田昇会長(69)はメディアとのインタビューで「1〜2年で優勝劣敗が鮮明になり、3社に集約される可能性がある。これまでの再編は『敵の敵は味方』というヤマダ包囲網の意味合いが強かった。そうした連携はもはや限界で今後は強い企業同士の連携が出てくるだろう」(日本経済新聞8月21日付朝刊)と語っている。

 さらなる再編は避けられないが、それは“勝ち組”同士の組み合わせになるという見立てだ。“勝ち組”は、ヤマダのほかに、ケーズHD、ヨドバシの3社だろう。ケーズは北関東が地盤で、かつてヤマダ、コジマと「YKK戦争」を戦った。郊外型のヤマダが悲願とする首都制覇に大きな壁となって立ちはだかっているのが、圧倒的な集客力を誇る都心駅前型のヨドバシだ。

 強者連合の可能性が最も高いのがケーズとヨドバシの連携だろう。「ケーズとヨドバシは商品開発で提携している。ケーズは郊外型、ヨドバシは都心駅前型で棲み分けができている。似合いのカップルだ」(家電量販店業界担当のアナリスト)。

 ヨドバシの創業者、藤沢昭和氏は9月18日に77歳。後継者は育っていない。藤沢氏がリタイアするのを機に、共同持ち株会社方式でケーズとヨドバシが経営統合するとの観測が強まってきた。ケーズの創業者の加藤修一会長は66歳と経営者として脂が乗った年齢だ。

 花嫁候補の呼び声が高いのは関西を地盤とする上新電機。阪神タイガースの広告スポンサーとして関西での知名度は抜群だ。ビックによるコジマ、ヤマダによるベストと買収が相次ぐと、上新の株価が上昇した。5月25日の安値725円から8月27日の高値920円まで27%上がったのは再編の、もう一人の主役としての期待からだろう。

 上新が花嫁候補として魅力的なのは、ネット通販事業が家電量販店業界でトップを走っていることだ。業界最大の脅威はネット通販である。米国ではネット流通大手、アマゾンが急伸し、上位の家電量販店の破綻につながった。今後は、リアル店舗同士の戦い以上に、ネットとの競争が激しくなる。だから各社ともネット通販に力を入れている。

 ネット通販で出遅れたのはヤマダである。家電の王者も、ことネット通販に関しては弱者でしかない。巻き返しに出たヤマダはグループのネットサービスを統合して、13年3月期のネット関連事業の売り上げを、これまでの約3倍の1000億円に引き上げる計画を打ち出した。

 ネットの強化にはM&Aが有効だ。ヤマダがベストの身売りを受け入れたのは、ベストの通販子会社で、東証マザーズ上場のストリーム(ベストの出資比率は29.3%、2012年1月現在)を傘下に組み入れることができるからだと言われている。これが隠された狙いだった。ヤマダはネット通販事業で強みを持つ上新電機を新たに手に入れることで、家電のネット通販でも王者を目指すものと見られている。

 こうしたライバルの動きを、ビックの創業者の新井氏は座視しているわけにはいかなくなった。会長に復帰して業界再編を陣頭指揮をする。ビックはコジマを合併しても勝ち組の仲間に入ったとはみなされなかった。どうしてもあと一枚、駒が欲しい。有力候補は中部、西日本で高いシェアを持つエディオンだろう。

 ビックとエディオンは07年2月に、09年をメドに経営統合を目指すと発表した。だが、1カ月で統合は白紙撤回された。オーナーだった新井氏は統合に積極的だったが、経営陣が「規模が大きいエディオンに呑み込まれてしまう」と危惧したため破談となった。ビックはコジマを合併したため、規模でエディオンと並んだ。経営統合の環境は整ったといえる。

 ヤマダの山田会長の「3社に集約される」との御宣託に従えば、ヤマダ・ベスト、ビック・コジマ・エディオン連合、ケーズ・ヨドバシの3グループに集約される可能性が高い。

 花嫁の最有力候補の上新は、ヤマダの陣営に加わるのか。それともビック・エディオン連合に合流するのか。いずれにせよ独身を貫くのは至難の業であろう。

 家電量販店のM&Aは戦国ダービーの様相を呈してきた。ビックの会長に復帰した新井氏は次なるM&Aに生き残りを賭ける。
(文=編集部)

BusinessJournal編集部

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