(「テレビ朝日HP」より)
そのA社は、
「外部からの採用は、転職エージェントをほとんど使用しない」
という独自の取り組みを行い、「アクティブに動く人事」「待ちの人材採用から投資効率を意識した人材採用」をポリシーとしている。
そんな同社の取り組みを推進するB氏に、
「転職エージェントを使用せずに、本当に優秀な人材を採用することができるのか?」
「採用の現場で、今、何が起こっているのか?」
そして、
「転職に失敗しないための新常識」
などについて、リアルな採用現場の実態を交えながら、語ってもらった。
ーー1年間何人くらいの採用を行っていますか?
B氏 現在、年間数百名規模の採用を行っています。その中には、新卒採用も含んでいます。全業界を見渡しても、かなり多くの採用をしているといって間違いないでしょう。
ーーその年間数百名にも及ぶポジションの成立には、いったい何名の人事担当者が携わっているのでしょうか?
B氏 基本的には社員は数名、その他に非正規社員が2名前後です。大変な量ではありますが、弊社の採用における効率の良さを象徴しているといえる数字かもしれません。
ーー具体的には、どのように採用活動を行っているのでしょうか?
B氏 一般的には、人材を採用したいと考えると、広告を出稿したり、人材紹介会社、つまり、転職エージェントにお願いするなど、さまざまな方法を検討すると思います。しかし弊社のようなグローバル企業の場合、優秀なスキルを持った社員は必ず世界中にいるはずなので、まず、「社内で適任者が探せないわけはない」と考えます。
最初に、世界中で社内公募を出し、それでも適任者が見つからない場合に、初めて社外に応募を出すようにしています。これは社員に自らのキャリアを自分で作る機会を与え、優秀な社員の流出も防ぐ効果もあります。人材を採用したいと思っている部署のニーズを、社内公募にて埋めることができますので、結果として、採用にかかるコスト(時間、費用)を大きく下げることが可能になります。他社でも社内公募を制度化している企業は多いと思いますが、実際に運用できている会社は少なく、弊社のウリでもあります。
ーーもう少し、詳しく説明してください。
B氏 採用の方法は、いくつかに分かれています。
(1)自社ホームページにて求人を掲載(ソーシャルメディアを用いた採用も含む)
(2)自社の社員に知人、友人を紹介してもらう
(3)転職サイト、雑誌広告等に求人を掲載する
(4)人材紹介会社に依頼する
一番コストがかからないのは、自社のホームページに求人を出すことです。最近は、独自性のある採用ホームページを作ったり、また、特にITベンチャーを中心に、ソーシャルメディアを用いた採用活動も積極的に行われています。
次に、既存の自社社員による紹介を使うことです。これは転職先を探している知人、友人を自社に紹介してもらう制度です。社員が紹介する知人、友人なので、これほど信頼できる採用方法はありません。そのため、各社社員紹介をどうやって増やそうかと、日々模索しているのが実情です。入社につながった場合、紹介者に成功報酬を支払う企業もあります。金額は1名の採用につき数千円から50万円程度が一般的ですが、Web系などの企業ですと、桁が一桁違うという話も聞いたことがあります。一方で、社員紹介に報酬は一切払わない会社も多く存在します。法律的に見て、人材紹介の免許を持っていない人に報酬を支払うのは「グレー」だと考えているのが、その理由です。
社内公募を出し、社員紹介でも人材が採れない場合に、求人広告を出す。それでも採れない場合に、初めて転職エージェント(人材紹介会社)を使うことになります。人材採用にはこうした多段階のプロセスがあるのですが、採用手法がリクナビか人材紹介会社しか知らない人事や経営者が多いのも事実で、いきなり何の戦略もなしに、営業の言うことを鵜呑みにして人材採用会社を利用している企業があまりにも多いのに、私は日々驚くばかりです。
ーー転職エージェントや採用広告にかかるコストは、どのくらいなのでしょうか?
B氏 転職エージェントを使用した場合、通常は採用された人の年収の30%前後です。求人広告では、数十万で1カ月掲載できますので、うまくいけば30万円で5名採れることだってあります。しかし、エージェントからの採用になると、例えば年収500万の人を採ろうとすると、約150万円かかります。成功報酬があまりにも高い。これだけのお金があれば、もっと別のことに活用可能です。もちろん、高くてもそれ相応の付加価値があればいいのですが、必ずしもそうとはいえない実情があります…。
転職エージェントの価値はいろいろとありますが、業界最大手のリクルートエージェントのWebサイトには、下記のようなサービス内容が記載されています。
(1)募集要項を理解した上で最適な人材を紹介します
(2)選考、面接、入社までサポートします
(3)候補者と事前面談、交渉を代行します
(4)成功報酬型の費用体系でリスクをなくします
(5)多様なニーズにも対応します
最も重要なのは、われわれが必要とする人材を連れてこられるかどうかです。広告などで採用できる候補者ではなく、リクナビNEXTでも社員紹介でも採れない優秀な人材を連れてきてもらえるなら、そこには転職エージェントの価値がある。
けれど、今までの人事は、上記のサービスのように、転職エージェントに自社の採用を任せっきりで、経営層にも「中途採用はエージェントを使わないと失敗する」と言い続けてきたのです。普通に、求人広告を出したり、場合によっては人事自らが動けば採れる人でさえ、エージェントを使う。何も考えていない。完全に待ちの人事。
今まではそれでもよかったかもしれませんが、採用予算が限られて、そして、何よりも人材紹介会社が優秀な人材ではなく、広告でも採れる候補者ばかり紹介するから、「高い」と感じるわけです。
ーー現在、御社の人事部門が独自に取り組んでいることや、目標としていることはなんでしょうか?
B氏 基本的に2つあります。ひとつはグローバル全体でエージェントの使用率を減らそうというものです。以前は、どのポジションの採用であっても人材充足が重要なので、エージェントを使用してよいというものでした。しかし、ある程度の基準を決めないと、本来正しい投資であるべきものが、正しくない投資になってしまう可能性があるので、基準を定めました。「特定のスキルと経験を持ったポジションの採用(詳細は企業秘密)は、エージェントを使用してよい」「年間で数ポジション、もしくは数百万円までに限る」という基準を定めることで、結果的に、エージェントの使用比率は落ちました。