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金融庁、円滑化法終了受け、再生ファンド設立を検討〜地銀の債権放棄を後押しか

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金融庁が入居する霞が関コモンゲート
(「Wikipedia」より)
 中小企業金融円滑化法が3月末で終了するため、中小企業倒産が急増するのではないかと懸念されている。東京商工リサーチの調査によると、昨年9月末時点で、普通法人および個人事業主の8.2%に当たる32万5430社あまりが円滑化法の申請を行ったとみられており、帝国データバンクが年末から年初にかけて実施した調査では、円滑化法終了後の金融機関の姿勢について「厳しくなる」と答えた中小企業は51.6%に上った。この中には、

「銀行は、すでに契約条件の変更や返済額の変更などを申し入れてきている。また、業態変更などの対応ができない場合は、融資の打ち切りを示唆している」(書籍小売、大阪府)
「金融庁には中小企業擁護の姿勢はあるが、現実の金融機関の対応とはかなりの開きがある」(土木工業、福岡県)

など、厳しい現状を訴える声が数多く寄せられている。

 金融庁は円滑化法が終了しても金融機関の姿勢が変わらないよう、検査を通じて指導していくとして、金融庁検査マニュアルにもその旨を明記している。しかし、「不良債権化しかねない中小企業向け債権を、いつまでも抱え続けることはできない」(地域金融機関)というのが本音だ。

 そこで金融庁が処方箋のひとつとして推し進めようとしているのが、地域金融機関が自治体などと組成した再生ファンドに、円滑化法で貸出条件を緩和されてもなお経営不振から抜けきれない中小企業向け債権を譲渡すること。再生ファンドが金融機関に代わって、時間をかけて再生支援していくというスキームだ。

 しかし、「中小企業向け債権を再生ファンドに疎開させても、再生できるのはごくわずかではないか」との厳しい見方も聞かれる。いずれ転廃業など最終処理は避けられない、いわばそれまでの時間稼ぎではないかとの指摘だ。金融業界関係者からは、再生ファンドへの債権譲渡は、「バブル崩壊後、親密企業向け債権をペーパーカンパニーに簿価で譲渡して延命させようとした“飛ばし”と同じ」と冷めた声も聞かれる。

●突破口見えない金融庁、地銀の苦悩

 また、金融庁は、金融機関は企業再生支援機構、中小企業再生支援協議会と連携して中小企業の再生を下支えするよう促しているが、現場から聞こえてくるのは、「大企業と違い、中小企業からすると、機構の利用は、再生ではなく、最終処理という受け止め方が強い」(地銀幹部)という厳しい現実である。

 この地銀幹部によれば「機構に持ち込まれた場合、中小企業としては、なんらかのかたちで経営責任、株主責任の明確化を求められ、家族のような従業員の解雇など大幅なリストラを迫られる可能性があるなど、警戒心が強い」というのだ。また、「機構への持ち込みによって、取引先から取引縮小を迫られ、再建が困難になるのではないかという懸念も聞かれる」(同)とも指摘する。加えて、金融機関が機構の利用を強調した場合、当局の意向を受け、不良債権処理を優先するのではないかとの誤解を招きかねず、企業との信頼関係を損なうことが危惧されてもいる。

●狙いは再生ファンドによる債権放棄か

 再生ファンドの利用は、こうした金融機関の苦肉の策ともいえるが、それでも金融庁は再生ファンドを後押しするため、2013年度税制改正において、金融機関から債権を取得した再生ファンドが債権放棄を行う場合、債務免除益と評価損の損金算入などの税的恩典を認めるよう要望を出している。「官民一体で中小企業の再生を後押ししたい」(金融庁幹部)というのが当局の偽らざる本音だが、残念ながら中小企業の不信感は完全に払拭されているとは言い難い。

 安倍政権が発足した矢先に、中小企業が大量倒産することになれば、金融庁の責任が問われかねない。経営不振で円滑化法を利用しながら、転廃業が必要とみられる中小企業は全国で5~6万社に上るとみられている。これらの企業向け債権を再生ファンドに譲渡した上で、再生ファンドが債権放棄を行うことでソフトランディングできればよいのだが。いずれにしても、中小企業金融はどこまでも政治的な配慮がつきまとう。
(文=森岡英樹/金融ジャーナリスト)