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松江哲明の経済ドキュメンタリー・サブカル・ウォッチ!【第20夜】

「全盲では生きてる意味ない」!? 全盲少女に対する“鬼母”の愛情

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それぞれのカタチがある。
(「Thinkstock」より)
ーー『カンブリア宮殿』『ガイアの夜明け』(共にテレビ東京)『情熱大陸』(TBS)などの経済ドキュメンタリー番組を日夜ウォッチし続けている映画監督・松江哲明氏が、ドキュメンタリー作家の視点で裏読みレビュー!

今回の番組:3月17日放送『ザ・ノンフィクション特選生きてます16才』(フジテレビ)

『ザ・ノンフィクション』はたまに特選と称して、過去の放送作にほんのちょこっと現在を加え、放送する。そのほとんどが大きなドラマがあるようなものではなく、ささいな「今」だったりするのだが、今回は違った。制作者の粋な仕掛けに感動した。

『生きてます16才』は12年前に放送され「ATP賞総務大臣賞」を受賞した作品だ。わずか500gの未熟児として生まれ、全盲の障害を持つ井上美由紀さん(16)と母、美智代さんとの生活を追っている。画面が旧放送サイズのSD(4:3)なので左右に黒味があり、それがデジタル放送前みたいで懐かしい。

 それに取材や編集のリズムも現在とは微妙に違う。

 母親のインタビューは蝉の音がうるさい公園で行われ、バストサイズの固定ショットのみ。信頼関係が深くなったであろうディレクターに向かって力強い言葉で語る。

 九州の人だからだろうか、言葉がキツイ。遠慮がない。で、とにかく手が出る。

 ペットボトルの注ぎ口に手をつけるだけでパシン、キャメラの前であぐらをかこうものなら「女のくせに何をしてる」とパシン。床掃除をさせる時も「頭をそんなに下げなくていいから」と躾は厳しい。

 視聴者である僕らは「目が見えないのに」とつい思ってしまうが、全盲であっても特別扱いはしないし、それはキャメラの前でも同じなのだ。

 一方、愛情の注ぎ方も全力だ。花火が上がれば娘の顔を支えてその方向に向けるし、「ウインナー、わたあめ、かき氷」と匂いだけで出店を当てればスタッフに向かって「凄いね」と褒める。誰もいない公園で自転車に乗るシーンが美しかった。小学生の頃は、所の子どもたちがいなくなったのを見計らって練習をしていたそうだ。16才の美由紀さんはかなり乗りこなしてるが、かつては何度も転び、血だらけになったそうだ。

「左、左、左」と美智代さんが声をかけるが、見ててもハラハラする。しかし、美由紀さんが「スピード感が楽しいですね」と語ることで、気付かされた。彼女は移動のために自転車に乗っているのではない。風を全身で感じることがうれしいのだ。そのためにできるだけまっすぐな距離を保ち、スピードを上げて風を浴びる。母親の「まっすぐ、まっすぐ」という声を頼りに。「何でもやる気になればできる」そのことを実践させる母親の覚悟と、そこに至るまでの過去を、番組は中盤になって紹介する。

「公園に連れていくと、『かわいい赤ちゃんですね』って言われるでしょ。私も『ありがとうございます』って言うんですけど、(ある時)『あらこの子、顔が変ね』って言われたんですよ。『目がどうかあるばい』とか言われて。で、私が『全盲なんですよ』って言ったら、『えー、目が見えないなら生まれてもかわいそうたい』って。心の中では腹は立ちますけど、話しても一緒だから、子どもを抱っこして家に連れて帰ったこともありますよ」

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疑似体験してみると分かる。

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