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鈴木貴博「経済を読む“目玉”」第7回

ダルビッシュ完全試合目前の勝負、“本当は”投手or打者どちらが有利なのか?

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『ダルビッシュ有の変化球バイブル』
(ベースボール・マガジン社
/ダルビッシュ有)
 数多くの大企業のコンサルティングを手掛ける一方、どんなに複雑で難しいビジネス課題も、メカニズムを分解し単純化して説明できる特殊能力を生かして、「日経トレンディネット」の連載など、幅広いメディアで活動する鈴木貴博氏。そんな鈴木氏が、話題のニュースやトレンドなどの“仕組み”を、わかりやすく解説します。

 まずはメジャーリーグに関するこのクイズをお読みいただきたい。

「4月3日のテキサス・レンジャーズの開幕第二戦、ダルビッシュ有投手がアストロズ相手に9回2死まで完全試合を続けて、最後の打者にヒットを打たれてしまいました。過去にもそういう惜しい例はあったそうですが、この最後のバッターとの勝負は通常、投手有利でしょうか? それとも打者有利でしょうか? ちなみに大リーグで過去に完全試合を達成した投手は23人、最後の打者との対決で記録を逃した投手はダルビッシュで11人目です」

 これはビジネスマン向けの戦略思考トレーニング用に作成した問題だ。先日発売した私の新刊『戦略思考トレーニング』(日本経済新聞出版社刊)のおまけのつもりで、最近の時事問題から一問、トレーニング問題を作成してみたものだ。Facebookの私のページで回答を募集したところ、色々な回答が集まって面白かったので、今回の記事にまとめてみようと思う。

 読者のみなさんも自分の答えを思いついたら、この後の解答を読み進んでほしい。

 さて、Facebookに寄せられた答えでは、面白いように投手有利と打者有利に答えがわかれた。どちらが正しいというのではなく、まず両極端の意見を書き出すと次のようになる。

「精神的に追い込まれている投手よりも失うものがない打者のほうが有利」
「そもそも野球って、打率はイチローだって4割に到達できないゲームなのだから6割以上の確率で投手が有利でしょう」

 では戦略思考で考えると、どちらが正しいのだろうか?

 実は戦略思考のトレーニング問題としての思考アプローチとしては「次の3つのステップで考える訓練をしてみよう」というのが出題者である私の意図だ。

(1)打者有利、投手有利の定義は何だろうか?
(2)その有利不利はどう測定するといいのだろうか?
(3)その有利不利を生んでいる要因はなんだろうか?

 以下、このステップで検証していくことにしよう。

 まず打者有利、投手有利の定義をどう考えるのか? メジャーリーグでもプロ野球でも、野球の場合、打てない確率のほうが打てる確率よりは高い。だからそもそも9回2死まで完全試合を続けていて最後のバッターを打ち取れるかどうかという確率でいっても、当然投手のほうが勝つ確率は高い。

 実際、過去この状況までたどり着いた34人の投手のうち23人が完全試合を達成しているから、達成率は.676と5割を超える。「最後の打者を打ち取れる確率が5割より高いかどうか」という定義で考えれば「当然投手有利」ということになる。

 もちろんこの答えでは完全試合達成目前のプレッシャーなど関係ないので、答えとしてはつまらなくなる。そこでもっとこの問題にふさわしい有利不利の定義を考えると、こうなるのではないだろうか?

「最後の打席での打者の出塁率(つまり完全試合が絶たれる比率)は、通常の打席での打者の出塁率よりも高いのか? それとも低いのか?」

 このように問題を定義して答えを探ると、どのような答えが導かれるのだろうか?

 ちなみにこのように問題を定義すること自体が戦略思考力の重要なトレーニングであるということは、最初に強調させておいていただきたい。

●最後で完全試合を逃す確率=平均出塁率?

『戦略思考トレーニング』


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