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シリアルアントレプレナー・小川浩「Into The Real vol.22」

ももクロ成功の秘訣 優れたITサービスは、先駆者のコピー&クローン?

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「ももいろクローバーZ オフィシャルサイト」より
 現在のソーシャル × モバイル化へと続くWeb2.0時代の到来をいち早く提言、IT業界のみならず、多くのビジネスパーソンの支持を集めているシリアルアントレプレナー・小川浩氏。『ソーシャルメディアマーケティング』『ネットベンチャーで生きていく君へ』などの著書もある“ヴィジョナリー”小川氏が、IT、ベンチャー、そしてビジネスの“Real”をお届けする。

『コピーキャット: 模倣者こそがイノベーションを起こす』(オーデッド シェンカー/東洋経済新報社)というビジネス書が話題になっている。

 内容は、ある意味当たり前のことを言っている。良いビジネス書とは、当たり前のことをそうでないように書いた本のことだ。その意味で、この本は成功している。

 本書が説くところを簡単に書くと、ゼロから革新的な何かを生み出す(イノベーション)と、それを行う人や企業(=イノベーター)の成功確率は実は驚くほど低く、参入市場において大きな果実を手にすることができるのは、優れたアイデアのコピー(イミテーション)を作り、より的確なクローン製品に仕上げる模倣者(コピーキャット)のほうであるという内容だ。一言でいうなら、換骨奪胎こそビジネスの要諦だということだ。

 もちろん、ただ真似ればいいという粗悪なコピーを量産しても駄目だ。クローン技術が理論的には可能でも、本来のDNAが持つ資質や能力、健康状態や寿命などを完璧に再現することが難しいように、実は誰かのアイデアを細密にコピーすることは非常に難しい。

 このビジネス書では、イモネーター(イミテーションをする人という意味のイミテーターとイノベーターを掛け合わせた造語)を目指せと言う。タイトルであるコピーキャットとは、日本語で言えば猿真似と訳せるかもしれないが、同じく相当に嘲りを込めた言葉だ。タイトルをイモネーターとせずにセンセーショナルなコピーキャットとしたところは、ややあざといかもしれない。

 イモネーターは誰かが考えたアイデアをパクリ、その後でさまざまな工夫を加え、余計なモノは削り、磨きをかけていく。ある意味オリジナルより良いモノでなければならない。オリジナルのアイデアや製品に付け足すだけでなく、削らなければならない。単にコピーすればいいというものではないのである。

 僕は前回のコラムで、「ハイコンセプトは斬新でなければならない、ということはない。流行廃りはあるし、タイミングというものもある。例えば、古い例で恐縮だが『ジョーズ』は人食いザメがリゾート地を恐怖に陥れるというスリラーだが、その後人食い熊がキャンプ地を恐怖に陥れる映画『グリズリー』が登場し、それなりに受けた。『グリズリー』のハイコンセプトは、“熊版のジョーズ”になる。つまり、市場がある、観客が喜ぶと実証されたハイコンセプトを真似る、クローン映画はある程度の売上の計算が成り立つわけだ」と書いた。つまり『グリズリー』は良いクローンだったが、その他のまがい物は単なるフェイクだったわけだ。

●ネット業界でもクローンは良い事業モデル

 ネット業界では、優れたクローンがたくさんある。ヤフオクはeBayのクローンだし、AndroidとGoogle PlayはiPhoneとApp Storeのクローンだ。GREEだってモバゲーの優れたクローンと言える。良いアイデアを発見し、そのクローンをつくることは良い事業モデルであり、何も恥じることのない真っ当なやり方だ(真似られたほうは気分が悪いかもしれないが)。

 ドイツのロケットインターネットという会社は、世界中の新興企業や新サービスをウォッチして、良いと思ったら即座にクローンをつくり、そのクローン企業をオリジナル企業に売るという事業をやって大成功している(そのかわり訴訟リスクを常に抱えているが)。日本のスタートアップ(ベンチャー企業)だって、コイニーはスクエアのクローンだし、僕のリボルバーもBackplane(レディー・ガガのLittleMonstersを運営)のクローンであると言えないことはない。

 僕が思うに、今一番わかりやすいクローンは、ももいろクローバーZかもしれない。彼女たちはそもそもはAKB48のコピーとして、「会いにいけるアイドル」というハイコンセプトから、「週末ヒロイン」=週末だけ会いにいけるアイドルというハイコンセプトをひねり出した。その後、よりカジュアルでよりアニメ的、非常に早いテンポで転調する楽曲と切れのいいアクロバティックなダンスを組み合わせることで、本家を凌ぐ人気を手に入れた。彼女たちはAKBのコピーキャットから始めて、オリジナルがなんであるかを忘れるくらい“転調”を繰り返した結果、もはや自身がオリジナルであると言っていいポジションを得たのである。