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アジア移住人気のワケ 起業や節税、高水準な教育求める母子留学、親の介護も安価…

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シンガポールに11年2月開業した超巨大ホテル「マリーナ・ベイ・サンズ」の屋上プール
 東南アジアに移住する日本人が増えている。国力低下につながる、富裕層や優秀な人材の流出は、なぜ起こっているのか? そして、移住先にはどんな魅力があるのか?  5月に『中国・インドの次に来る大チャンス 新興アジアでお金持ち』(講談社)を上梓した岡村聡氏に解説してもらった。


 私は貯金をこれからしていく20代の若者から、資産数十億円以上の超富裕層まで、幅広い年代・資産クラスの方々に資産運用のアドバイスを行う会社を経営しているが、最近、頻繁に多くのお客様から海外移住についての相談を受けるようになってきた。

 その中でも、シンガポール、マレーシアを中心とした東南アジアへの関心が非常に高まっている。これまでは、オーストラリアやニュージランドなどのオセアニアも、移住先として日本人の注目を集めてきたが、中国人を中心とした富裕層が殺到したことで、数年間の居住ビザの取得に5000万円以上を、永住権の取得には5億円以上を、両国政府が指定する商品に投資しなければならなくなったため、ほとんどの人には手が出しづらくなった。そこで、地理的にも文化的にも日本と近く、経済的なハードルも他の地域への移住ほど高くない東南アジアが注目されるようになってきた。

 東南アジアへの移住に関心を持つ人たちは、大きく4つのパターンに分けられる。1つ目は富裕層や起業家が節税やビジネスのために行う移住で、この目的についてはシンガポールが圧倒的な人気となっている。2つ目は、現役世代がキャリアアップの中で転職することに伴う移住で、これについてもシンガポールが最も人気だ。3つ目は、引退世代が老後の生活費を抑えつつ、かつ充実した生活を送るための移住で、この目的ではマレーシアやタイが中心だ。最後の4つ目は、近年急増してきている母親と小さな子どもによる母子留学だ。母子留学についてはシンガポールが人気だったが、マレーシアも注目を集め始めている。

 一般的に“東南アジア”と呼ぶ時に対象となるのは、ASEAN(東南アジア諸国連合)に加盟している10カ国だが、日本人の移住先としては上記のようにシンガポール、マレーシア、タイの3カ国が中心となる。製造業を中心に進出が進むインドネシアやベトナム、経済が絶好調のフィリピンなどへの関心も高まってきてはいるが、日本人で現地に住む人は駐在員など期間が限定である人がほとんどで、完全に移住する人は少ない。

●手厚い税優遇

 富裕層や起業家がシンガポールに移住する最大のポイントは、やはり税金だろう。企業収益にかかってくる法人税は日本が40%程度であるのに対して、シンガポールはわずか17%だ。さらに、シンガポールで創業した法人は、創業3年目まで法人税が10%程度にまで軽減され、大企業もアジア本社をシンガポールに置いた場合は5%程度、グローバル本社を置いた場合は0%まで法人税が優遇されることがあるようだ。

 こうした低い税金を求めてグローバル企業の多くはアジア本社をシンガポールに置くようになっており、昨年はP&Gがアジア本社を神戸からシンガポールに移し、三菱商事の金属部門も本社を東京からシンガポールに移したことは、日本でも話題になった。

 法人税だけでなく、所得税の最高税率も日本の場合50%(住民税を含めて)で、これが55%まで引き上げられることが検討されているが、シンガポールでは20%と半分以下の水準だ。また、富裕層にとっては、投資収益にかかるキャピタルゲイン課税や相続税がシンガポールにはないことも魅力だろう。

 このように、狭い国土で資源にも乏しいシンガポールは、国を挙げて富裕層・起業家を集める優遇策を整えることで、高付加価値人材をグローバルから集め、それがさらに人的ネットワークとなりシンガポールの魅力を高めることになるという好循環に入っている。不動産価格の高騰や、生活費の上昇など負の側面も現れ始めているが、日本人を含めた世界の富裕層・起業家がシンガポールに集まるトレンドはしばらく続くだろう。