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「ダイヤモンド」vs「東洋経済」! 経済誌双璧比べ読み(6月第4週)

京セラにKDDI、そしてJAL再建…恐るべき稲盛経営と盛和塾の団結力

京セラにKDDI、そしてJAL再建…恐るべき稲盛経営と盛和塾の団結力の画像1
好々爺。(「京セラ HP」より)
毎日の仕事に忙殺されて雑誌を読む間もないビジネスマン必読! 2大週刊経済誌「週刊東洋経済」(東洋経済新報社)と「週刊ダイヤモンド」(ダイヤモンド社)の中から、今回は「週刊ダイヤモンド」の特集をピックアップし、最新の経済動向を紹介します。

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「週刊ダイヤモンド 6/22号」の特集は「解剖 稲盛経営」だ。「京セラKDDIを創業し、すでに名経営者としての盛名を固めていながら、78歳にしてあえて火中の栗を拾うように日本航空の再建を引き受け、日本航空では会社更生法の適用から2年で営業利益2000億円というV字回復をやってのけた稀代の名経営者」稲盛和夫氏の経営哲学を徹底解剖する特集だ。

 特集の巻頭は稲盛和夫インタビュー、日本航空の再建を引き受けると、すぐに海外のコンサルタントが4~5社やってきて「われわれは米国で倒産した航空会社を再建した、非常に慣れている」と売り込まれたものの、全部断った話。日本航空の幹部連中に「経営とは会計学的な計数を見てするのが基本」と月々の決算の提出を求めたところ、3~4カ月前の決算が出てくるという硬直化した官僚的な組織だったという話などを紹介している。

 稲盛経営のポイントは、フィロソフィ(人生哲学)とアメーバ経営だ。稲盛のフィロソフィの判断基準は「人間として何が正しいかで判断する」こと。「経営の目的とは社員たちの物心両面の幸福を達成すること」で「職場職場で創意工夫しながらどうすれば無駄を省き、効率のいい作業ができるか、一生懸命に考える」ことで企業によってそれぞれのフィロソフィが形成される。そして、アメーバ経営とは会社の組織を小集団に分けて、その集団を独立採算で運営する経営システムのこと。組織の末端に至るまで、経営実態を正確かつタイムリーに把握する管理会計を導入している。フィロソフィとアメーバ経営により、全従業員が自主的に経営に参加する「全員参加経営」を実現させるのだ。

 つまり、従業員1人ひとりに経営者の視点を持たせるというわけだ。経営者は、そのビジョンと環境整備に徹すればいいということになる。

 中小企業の経営者を中心に信奉者は多く、その経営哲学を学ぶ若手経営者の勉強会「盛和塾」のメンバーは、いまや8000人を超す。

 特集『Part1稲盛和夫とは何者か』では、97年、65歳の時に京セラ、KDDIの会長職を退き、臨済宗妙心寺派円福寺にて在家得度(出家せずに仏教に帰依すること)をし、仏法の教えに沿った生き方を守っていることを紹介。「盛和塾」の熱き勉強会の模様も紹介している。

 83年に発足した盛和塾はすでに30年、国内外に70の支部がある。毎月開かれる「塾長例会」には稲盛は手弁当で参加、講話や懇親会を通じて薫陶を授けているのだという。名刺交換と記念写真撮影で稲盛はアイドルのような扱いを受ける。塾生はお互いを「ソウルメイト」(魂で結ばれた仲間)と呼ぶことから、その団結力は宗教集団的と揶揄されることも多い。

 特集『Part2哲学と実学の実践現場』では京セラ、KDDI、日本航空でのフィロソフィ(人生哲学)とアメーバ経営の実践を紹介し、特集『Part3稲盛流「成功の方程式」』ではその教えに師事する経営者(盛和塾のソウルメイト)たちの実践を紹介している。有名な経営者としては、飲食業に革命を起こす「俺のフレンチ」「俺のイタリアン」と都内15店舗展開する運営会社「俺の」の社長坂本孝氏を紹介している。坂本氏は、中古本チェーン・ブックオフコーポレーションの創業者でもある。

 ただ、そのほかは、漢方薬メーカーの5代目社長、シャフト鍛造会社の3代目、父が創業者の老舗メーカー……といった具合に、盛和塾のソウルメイトたちは中小企業のボンボンが多いのだ。

 中小企業の2代目、3代目を相手にした組織にはJC(日本青年会議所)もあるが、盛和塾も同様に、右も左もわからないまま社長になってしまった中小企業のボンボンのための親睦・学習の集まりのようだ。自分の会社の社長が盛和塾に入れば、社員たちも稲盛の著書を読まざるを得なくなる。こうして稲盛の本の多くがベストセラーになるという仕組みではないだろうか。たとえば、その著書『生き方』(サンマーク出版)は100万部突破のベストセラーだ。

 もちろん、稲盛の経営手腕は誰もが認めるところだ。ただし、稲盛にもできなかったことがある。「企業経営では多くの成功を成し遂げた稲盛さんですが、政治についてはいまだ成功していません。彼は日本社会の官僚機構による安定志向を変えたがっている。これが日本を滅ぼしていると思っているわけです/民主党に肩入れして改革を起こそうとしたのですが、民主党も結局は官僚機構に取り込まれてしまいました」と語るのは作家の堺屋太一だ。

 特集記事『インタビュー 一般感覚を常に持った「体制的反主流派」の経営人』のなかで堺屋は「初めは大変高い志で政治家になった人も、一回落選すると、その後は当選することだけが目的になってしまう。難しいですね」と語る。たしかにその通りだが、堺屋も橋下徹大阪市長がタレントから政治家になるきっかけを作った後見人的な人物で、自身も政治で成功しているわけではない。優れた経営者でも、政治家を見る目は別ということかもしれない。
(文=松井克明/CFP)

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