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グラノーラ、ブームの舞台裏〜火付け役・カルビーに聞く戦略…メニュー化する飲食店続出

文=編集部
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グラノーラ、ブームの舞台裏〜火付け役・カルビーに聞く戦略…メニュー化する飲食店続出の画像1カルビーの「マイ・グラノーラスタイル」

 昨年から第2次グラノーラ・ブームが到来している。グラノーラとは、オーツ麦や玄米、とうもろこしなどの穀物や雑穀をハチミツや黒砂糖などと混ぜてオーブンで焼いたシリアル商品。「健康」「おしゃれ」「グルメ」というグラノーラのイメージが受け、「bills」「サラベス」などの人気レストランや、「スターバックス コーヒー」「タリーズ コーヒー」といった大手コーヒーチェーンなどで定番メニューとして人気を博すほか、8月には専門店「GANORI」(東京)もオープン。グラノーラ全体の売り上げも、年間250億円といわれる国内シリアル市場において急伸している。

 そんなグラノーラを1991年に日本で初めて販売開始し、ブームの火付け役でもあるのが、菓子メーカー・カルビーだ。今回は、9月に「贅沢さ」「グルメ」をさらに追求し、1000人以上への試食調査の末に生まれた新製品「マイ・グラノーラスタイル」を発売するカルビー総合企画本部長付の佐藤あん奈氏に、

「グラノーラ・ブームの背景と現状」
「グラノーラ・ブームを牽引するカルビーの戦略」
「新製品発売の裏側と狙い」

などについて聞いた。

–昨年からグラノーラがブームですが、その背景はなんでしょうか?

グラノーラ、ブームの舞台裏〜火付け役・カルビーに聞く戦略…メニュー化する飲食店続出の画像2カルビーの佐藤あん奈氏
佐藤あん奈氏(以下、佐藤) 当社が販売するグラノーラの2012年度売り上げは、対前年比169%の大幅増となりました。当社は販売を開始した1991年以降、朝食にシリアル食品を食べている消費者をターゲットにマーケティング活動を行っていましたが、世間には“子どもの朝食”というイメージが浸透していました。しかし、スーパーなどの店頭でグラノーラの試食会を行ったところ、試食した方のほとんどが買ってくれるということから、「この商品は品質が高く、一度食べた顧客の評価が高いにもかかわらず、一度も口にしたことがない顧客が多い。よって、認知度を高めれば売り上げが伸ばせる商品だ」と確信したのです。そこで戦略を転換し、幅広い年代層向けにまずは口にしてもらうことを目標にした販促活動に切り替えたところ、SNSなどでの書き込みが増え、話題となってきました。

 一方で、女性タレントや人気読者モデルが、グラノーラのおいしさ、栄養の高さについてブログで毎日のように情報発信していることや、伝統的なアメリカの朝食料理を提供する「bills」「サラベス」などの国内レストランでグラノーラが提供されたことも、ブームを後押ししました。

 このような弊社の販売戦略と社会トレンドの相乗効果で、従来の“子供の朝食”というイメージが払拭され、“健康的で、食事として満足できるもの”という理解が広がり、健康的でグルメな食品として認知度が高まったことからブームが到来していると考えています。

–貴社は、グラノーラのレシピ本も出版されていますね。

佐藤 朝食用途のみならず、サラダや肉・魚料理など斬新なアイデアでグラノーラをさまざまな料理に生かす方法を紹介したレシピ本を出版しました。例えば、ヨーグルトは多くの女性が好んで食べる食品のひとつですが、そのヨーグルトにグラノーラを加えていただくことで、ヨーグルトをよりおいしく食べていただけるだけでなく、食物繊維や鉄分もさらに付加されます。つまり、「シリアルは牛乳をかけて朝に食べるもの」という従来のイメージをあえて壊し、グラノーラを、朝食の主役としてではなく、“わき役”として、ヨーグルトなどとともに食べていただくような提案をしたわけです。

キーワードは「贅沢」「グルメ」

–貴社が9月に販売開始する新製品「マイ・グラノーラスタイル」は、どのような消費者をターゲットにしているのですか?

佐藤 仕事に忙しく、朝食をおざなりにしている消費者が多いことを受け、平日は忙しくて無理だけれども、「週末くらいはゆっくりと朝食がとれるような、素材をかみしめながらゆったり味わっていただけるもの」というコンセプトで開発しました。朝を大切にすると、1日を有意義に過ごせます。朝食に対して時間やお金をかけられるような、グルメ意識の高い方にはぜひ味わっていただきたいです。

 今後消費者の要望に沿い、どのようなラインナップを当社のグラノーラに揃えていくべきかを考えた時に、競合各社では機能性を追求してラインナップを増やしているのですが、弊社は「掘りだそう、自然の力。」をスローガンにしていることもあり、「できるだけ素材そのままの美味しさを味わっていただけるもの」という切り口でラインナップを充実させるべきだと考えました。そこで、私たちは穀類やフルーツの加工方法にこだわり、美味しさを追求しているわけです。

「素材を大事にする」という思想は、「マイ・グラノーラスタイル」だけでなく、弊社全体に浸透した思想なのです。当社の「ベジップス」という野菜をそのまま加工した商品が売り上げを伸ばしていますが、グラノーラ同様に「素材を大事にする」という点が評価されているからだと考えています。

–「マイ・グラノーラスタイル」の販売開始はいつですか?

佐藤 9月24日から、弊社のオンラインショップ通販サイト・LOHACOで販売しますが、弊社オンラインショップでは、すでに9月10日から予約を受け付けています。また、ホテルニューオータニのレストラン「SATSUKI」の「パーフェクトメニュー朝食ビュッフェ」のメニューの一つとして、期間限定で提供されています。

–販売チャネルをオンライン通販だけに限定している理由はなんですか?

佐藤 お客様とのコミュニケーションを重要視しているからです。例えば、オンラインチャネルであればお客様とワン・ツー・ワンで接することができ、お客様の生の声を直接すぐに聞くことができます。そういう声を商品開発に生かしていきたいと考えています。ホテルとの提携でも、お客様の声を身近に受け取れるというところがありますね。

 それから、「そこでしか買えない」という、ある種の付加価値の創出も狙いのひとつです。どこでも買える商品であれば、オンラインショップでは価値のない商品になってしまいます。例えば、私どもの「じゃがポックル」は、最近はポテトファームの通販サイトでの購入も可能となりましたが、基本的には北海道の地域限定商品で、北海道内の空港、駅売店および土産物店で販売しています。発売後、「非常においしい」とたちまち人気商品となり、長い間好評を博している商品です。「マイ・グラノーラスタイル」も、同じように育っていくといいですね。ただ、今後どういうお客様にどういう経路で提供していくかは、中長期的に考えていかなければいけないと思っています。

商品開発の裏側

–「マイ・グラノーラスタイル」の商品開発に当たり、最も気をつけた点はどういうところですか?

佐藤 「贅沢なフルーツの使用」をコンセプトに、フルーツにこだわりを持ちました。そこで、女性の方々が好まれるような、ブルーベリー、カシス、アプリコットといったさまざまな素材をいろいろ組み合わせ、大きさや量を変えて何度も試作を繰り返しました。開発は去年の春くらいにスタートしましたので、1年半くらいかけて、試作品はたくさん作りましたね。その上で1000人以上の消費者に対して何回にも分けて試食調査を行いました。その結果、本当においしい、買いたいという声が多かった「輪切りバナナとざく切りイチゴ」「たっぷりりんごと香ばしアーモンド」の2品に絞ったわけです。

–最終的に、この2品に絞られた理由は?

佐藤 「市場で売れているものを上回るものでなければ、新商品を出さない」というのがカルビーの基本方針です。そこで、現在すでに市場で売り上げを伸ばしている当社のグラノーラよりも、高いお金を出しても買ってもらえる価値はあるか? という視点で厳しい調査を行ってきました。

「たっぷりりんごと香ばしアーモンド」の場合には、「たっぷりりんご」というだけに2~3倍のりんごを使っています。試食された方からは「まるでりんごそのものを食べているかのようだ」「これなら毎日でも食べたい」という声が多かったですね。一方、「輪切りバナナとざく切りイチゴ」の輪切りバナナのような大きな素材は、生産ラインに乗せることが難しいこともあり、あまり使用されないものです。今回、あえて挑戦したわけですが、「バナナと牛乳とのハーモニーが絶妙」と好評でした。また、イチゴとりんごはもともと当社のグラノーラの中でも人気の高いフルーツです。その2つのフルーツの“量を増やしたもの”と“大きくしたもの”が入っているわけですから、期待に背かないものが完成したと自信を持っています。

–シリアル市場における、今後の貴社の戦略について教えてください。

佐藤 米国のシリアル市場は1兆円市場といわれていますが、一方で日本は250億円から300億円と米国市場の40分の1しかなく、日本のシリアル市場が成長する余地は大きいと思っています。

 今後は国内市場の売り上げで14年には100億円、できるだけ近い将来に200億円を目指し、シリアル市場を牽引していきたいと考えています。

–ありがとうございました。
(構成=編集部)

BusinessJournal編集部

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